人間にとって一番怖いものはなにか。それは人間かもしれない。ノンフィクションライターの小野一光さんは、宮城県で起きた「石巻3人殺傷事件」の取材を続けてきた。裁判員制度で初めての少年死刑囚となった犯人はどんな男だったのか――。 ■宮城県石巻市で起きた3人が死傷した事件 これほど好きなのにもかかわらず、相手が離れていったのは、向こうの親族が交際に反対したからだ。そうした思いに囚われ、当該親族を傷つけて恨みを晴らそうと考える。そこまでならば、よくある犯行だ。 だが、その罪を自分で被るのではなく、逆らえない手下に背負わせようとするのは、なかなかに卑劣な思考ではないだろうか。 2010年2月10日の早朝、宮城県石巻市にある小野寺早苗さん(当時18、仮名。以下、被害者は全員仮名)の実家に男2人が忍び込み、家にいた男女4人のうち3人を殺傷するという事件は、まさにそんな事件だった。 家にいたのは早苗さんのほかに、彼女の姉である小野寺由希子さん(死亡時20)と、その友人の佐藤真理さん(死亡時18)、さらに由紀子さんの交際相手だった藤村幸一さん(当時20)である。 犯行から約6時間後に同市内の知人宅で逮捕されたのは、元解体作業員の千葉祐太郎死刑囚(当時18)と、千葉の子分のような存在だった無職の少年A(当時17)だ。 千葉は寝ていた由希子さんと友人の真理さんを刃渡り約18センチの牛刀で複数回刺して殺害。さらに姉妹の相談相手だった藤村さんに重傷を負わせている。そのうえで早苗さんを連れ出し、監禁していた。