少年はなぜ、ナイフにすがるのか。中学生や高校生の殺人事件が止まらない。 先日はパリ郊外の高校前で、17歳の生徒が刺殺された。逮捕された7人は、いずれも10代。地域で縄張りを争うグループ間の乱闘だった。 現場に行ってみると、「荒れた学校」のイメージとは程遠い。校舎には落書きひとつなく、向かいの公園は休日を楽しむ家族でにぎわっていた。物々しいパトカーの巡回に、水面下の緊張がにじむ。ある高校生は「やられた奴(やつ)らは必ず報復する。また事件が起きるのが怖い」と話した。 パリ市警は昨年の刃物押収は6500件にのぼったと発表し、「護身用に持ち歩く子供が増えた」と警鐘を鳴らした。1月に市内で16歳の少年が携帯電話を奪おうとして14歳を死なせた事件では、刃渡り40センチの「ゾンビナイフ」が使われたという。刃が斧(おの)のように幅広く、のこぎり状に刻まれたナイフのことで、名称はホラー映画に由来する。若者への浸透は近隣国でも問題になっており、英国は昨年、法で所持を禁じた。 少年犯罪や乱闘はいつの時代もある。だが、最近の犠牲者続出は尋常ではない。フランスでは、大人の付き添いがない15歳以下の夜間外出を禁じる自治体も出てきた。ロシアの脅威に身構える欧州は、内なる不安も抱えている。(三井美奈「パリの窓」)