韓国の安全保障を揺るがしかねない事態が発生した。京畿道水原市(キョンギドスウォンシ)にある水原空軍基地で、空軍第10戦闘飛行団の戦闘機を無断撮影していた10代後半の中国人高校生2人の驚くべき行動が明らかになった。さらに衝撃的なことに、彼らは過去にも複数回韓国に入国していたのだ。SBS、YTNなど韓国メディアが報じた。 <不審な10代の若者の正体は……> ソウル市中心部から南へ車で1時間ほどの場所に水原空軍基地がある。日本統治下の時代、日本軍によって建設され、その後は米軍の管理下で朝鮮戦争でも重要な役割を果たし、休戦後の1954年に韓国空軍に管轄権が移譲された基地だ。現在は韓国空軍第10戦闘飛行団と米空軍が駐留しており、米軍の偵察機が北朝鮮へ飛び立つ拠点となっている。 3月21日午後3時30分頃、水原空軍基地には轟音を響かせながら飛行する戦闘機と、その姿を望遠レンズを付けた一眼レフカメラでじっと狙う2人の少年たちの姿があった。不審に思った近隣住民の機転による通報で警察に摘発された彼らは、中国人の高校生だった。 <「父親が中国公安所属だ」> 捜査当局の調査により浮かび上がったのは、この中国人高校生たちの計画的とも思える入国パターンだ。特に注目すべきは「父親が中国公安所属だ」と自ら明かしたA君の存在だ。彼は昨年下半期、今年初め、そして先月18日と計3回も韓国に足を踏み入れていた。同年代のB君も昨年下半期と先月18日に入国。両容疑者はいずれも4〜5日間という短期滞在を繰り返していたのだ。 <軍事機密を狙った広範囲の撮影作戦> 捜査で明らかになった彼らの行動範囲は驚くべきものだった。この水原空軍基地をはじめ平沢(ピョンテク)烏山(オサン)など、韓国の空の守りを担う主要軍事施設4カ所を巡り、さらには国際空港3カ所までもターゲットにしていた。 彼らが所持していたデジタル一眼レフカメラとスマートフォンからは、最新鋭のF-35ステルス戦闘機を含む数千枚もの軍事施設の写真が発見された。これは単なる趣味の域を超えた計画的かつ組織的な情報収集活動の疑いを強く抱かせるものだ。 この事態を重く見た京畿南部警察庁安保捜査課、国家情報院、国軍防諜司令部は特別協議体を結成。「飛行機の写真を撮るのが趣味だ」と主張する容疑者たちの言葉の真偽を見極めるべく、写真の用途や背後関係の徹底調査が進められている。A君の中国公安という家庭環境との関連性も捜査の重要なポイントだ。 <頻発する軍事機密への接近> 今回の問題が深刻に捉えられているのはこれが単独の事件ではない、という点だ。昨年6月には中国人留学生3人が釜山に入港したアメリカの航空母艦をドローンで無断撮影、同年11月には国家情報院の庁舎を撮影していた中国人が摘発されるなど、中国人による韓国の軍事・安全保障施設への不審な接近が相次いでいる。 さらにはこの3月29日には現役の韓国軍兵士から軍事機密と非公開資料を収集してきた中国人グループのメンバーが逮捕される事件も発生している。彼らに情報を渡していた兵士は、軍内部のイントラネットに掲載された韓米合同軍事演習の進行計画などを渡していたという。 表面上は無邪気な行動の裏に潜む、国家間の緊張関係と諜報活動の影。韓国の安全保障に新たな課題を突きつける事態は、今後どのような展開を見せるのか。捜査の行方に注目が集まっている。