人生において人との縁はとても大切な要素と言えます。しかし、あらかじめ相手との縁の有無や、その後の関係について分かってしまったら、生きていくうえで窮屈に感じるかもしれません。漫画家のカトウタカヒロさんがサンデーうぇぶりにて連載中の『サイコアイズ』は、人の縁が視える主人公が、能力を駆使してトラブルを解決する様子が描かれた作品です。第1話がX(旧Twitter)にポストされると、約2万もの「いいね」が集まっています。 無職で18歳の「渡辺経」は、昔から「人の縁が視える」という特殊な能力を持っていました。彼の目を通して人をみると、体から縁がある人に向かって赤い糸が伸びており、薄い関係性になるほど糸はちぎれやすくなります。 経は自身の能力によってたくさんの糸を見てきた結果、人付き合いを拒むようになって居場所は常にSNS。そして、いつものようにSNSを眺めていると、ネガティブな投稿が多い相互フォローの「ウルス」が、殺人をほのめかすようなコメントを投稿。それを見た経はウルスを煽るため、「そんときゃ 一緒にやろう」と投げかけたところ、「やっぱりあなたは信頼できます DM送りました」との返事が。「見ねーよ」と言って、経はウルスを無視するのでした。 その後、腹が減って外出した経は、男女の警察官「善」と「奏」に声をかけられ、警察署にて尋問されることに。どうやらウルスについて聞きたいようで、善が経に「俺たちはウルスを探している」と伝えます。 そんななか、経は警官たちの縁の糸を見て、「兄妹で警察なんだ…」とつぶやくと、善と奏はすぐさま経に迫って「誰に聞いた?」と尋ねます。 善は経の目を見つめ、ややすると驚愕した様子で「コイツ サイコアイズだわ」と言葉をもらします。サイコアイズとは、見えないものが視える目を持った超能力者のこと。そして、善や奏などはサイコアイズを集めた念視捜査班、通称「マルメ」に属してるメンバーでした。 そして、問題のウルスは経が焚きつけたことで、他の共犯者と共に無差別殺人を実行しようと動き出します。責任のある経に対し、善は「ついてこい!」と言って予告された犯行現場である映画館周辺に直行。その後、経の能力に頼ろうとするも、人の多さからウルスを特定することができません。 経は弱気になり、ウルスの特定を諦めかけた時、体から縁の糸が一本も出ていない少女を発見。さらにウルスの投稿を思い出し、少女がウルスと確信します。そして、ウルスから一本だけ薄い糸が伸びていることに気づき、それは経につながっているのでした。 その後、追手に気づいたウルスが逃走。逮捕しないことが理想でしたが、奏は周りの命を優先して捕まえようとします。すると、先回りしていた経がウルスの前に立ちはだかり、彼女をなだめて、さらに一緒に映画を観ようと誘います。優しい言葉にウルスは涙を流すのでした。 一件落着かと思いきや、身を潜めていた共犯相手のひとりがウルスをさらって逃走。善が追いかけるも、その先で大勢の悪党に囲まれます。ピンチかと思われたなか、善は「俺の視てきた世界も、そこそこハードなんだぜ」「そういうシブみがカッケェ オトナを作るのサ」と笑みを浮かべながら経に言うのでした。 読者からは「経の優しさに感動」「ラストは本当に痺れた」などの声が。そこで作者であるカトウさんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。 ―同作を描いたきっかけを教えてください。 空港で行き交う人を手元のスマホカメラで写して何かできないか考えていた時、たくさんの人たちの間に縁の糸が見えてそれを切ったりつなげたりして、他の人の人生を操るスマホゲームを大事にした漫画を考えました。 そのアイデアを読み切り漫画にしようとした時、いや、だったら肉眼の方が…いや、だったら目の力をもっと増やせば…この物語の主人公にするなら…をポンポンと組んでいった結果、今のような形になりました。 ―第1話のなかで特に気に入っている場面があれば、理由と一緒に教えてください。 ラストの見開きから最終ページまでの善のセリフです。経の大人という存在への失望を否定するのではなく、肯定した上で超える言動、さらに行動で示そうとするところにワクワクします。 ―新連載に向けて大変だったことや印象に残っている出来事があれば、ぜひお聞かせください。 読み切り版の時点で、ある程度人気をいただいていたので、そこからどこを変えてどこを変えずにいくかの判断に迷いました。大きく変えたものからそこまで変えないものまで、実際に何度も同じようなネームを書き直し、最後まで答えは出ず、読者のみなさまに読んでいただくまで自分でも全然面白いと思えなくなるほど悩みました。 ―読者にメッセージをお願いいたします。 『サイコアイズ』を読んで、そこからなんでもいいので、受け取っていただければ嬉しいです。 (海川 まこと/漫画収集家)