<大阪朝鮮高級学校>どうする金父子肖像 撤去、回答時期迫る
毎日新聞 2010年10月25日(月)18時13分配信
◇府の支援
◇知事、特定の権力者支持に/父母、子どもを巻き込むな
大阪朝鮮高級学校(朝高)=東大阪市=に対する大阪府の補助金支出の是非を巡り、橋下徹知事が出した条件に朝高側がどう答えるのか、今月末にも回答の時期が迫っている。最大の焦点は知事側が求める教室の金正日(キムジョンイル)総書記・故金日成(キムイルソン)主席父子の肖像画を撤去するかどうか。「求めるのは学校運営の自由か、それとも公金か」。一歩も引かない知事に、保護者らは「両国間の問題に、子どもたちを巻き込まないでほしい」と不安を感じている。【田中博子】
長年にわたり補助金を出してきた大阪府。09年度、約2800万円の振興補助金を出した。ところが、高校授業料無償化で朝高の扱いを巡り、内閣で議論が起きたことをきっかけに、知事は今年3月、「不法国家の北朝鮮と関係があれば、支援できない」と表明。補助金を出す条件として、肖像画撤去▽適切な教育内容▽朝鮮総連との関係の遮断−−の3点を朝高に示した。
授業料についても、府は今年度、年収350万円未満の世帯の私立高校生らを対象に、独自事業として無償化しているが、朝高に対しては、3条件の回答があるまで支出を保留している。
教育内容は府の専門家会議が一部修正を求めたうえで「ほぼ学習指導要領に準じている」と結論づけ、総連との関係については、朝高が「理事会に総連の関係者は入っていない」と否定。これらはほぼ収束したが、肖像画の問題が残った。
関係者によると、各教室の肖像画は戦後、貧しい生活を強いられた在日1世らが、教育のために送金してくれた本国に感謝して掲げたという。朝高関係者は「肖像画には1世の気持ちが詰まっている。儒教社会で1世がしたことを我々の代でやめるのは、考えただけで恐ろしい」ともらす。知事は「肖像画は特定の権力者の偏った支持にあたる」と主張する。
保護者が朝高に期待するのは、歴史や文化から朝鮮系住民としてのアイデンティティーを学ぶ「民族教育」だ。府の専門家会議も朝鮮語の習得などを挙げ「グローバルな人材育成が期待できる」と評価した。
知事も民族教育の必要性は認めるが、「国民感情に配慮しないといけない。僕の意見をくみ、府民に生じている疑念をクリアにしてほしい」と求める。一方、3年の息子がいる母親(51)は「肖像画は学校のルーツを考えるためのもの。個人崇拝ではない」としている。
朝高にとって、府の補助金は学校運営費の2割を占める重要な資金源で、カットされれば学校存続の危機に直結する。一橋大の田中宏名誉教授(日本アジア関係史)は「教育の国際化が進むと必ず出てくる問題。(北朝鮮という)国の問題を、在日の子どもたちと結びつけて考えることはおかしい。子どもたちに与える心理的影響も考えるべきだ」と指摘する。