「職員基本条例案」30日ガチンコ対決 攻める維新 譲れぬ府職員
産経新聞 2012年1月28日(土)15時12分配信
橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」が大阪府議会に提案した職員基本条例案をめぐる議論が30日、府市統合本部会議で行われる。人事評価や処分の厳格化を目指した維新案は人事評価に相対評価を導入、最低ランクが2年続いた場合や、同じ職務命令に3回連続違反した場合は分限処分の対象としたが、府総務部は687項目もの問題点を指摘し、対案を作成。人事評価では絶対評価の維持を譲らず、処分基準でも職務命令違反の具体的な回数なども盛り込まない方針で、溝は埋まっていない。
◆厳格実施の対案も
「(相対評価は)譲れません。やっぱり、下から5%は仕事に向いてるか向いてないかも含めてやらなあかん。30日には決めます」。松井一郎知事は25日、記者団にこう述べると、退庁の車に乗り込んだ。
争点の一つは、人事評価の手法。S(5%)、A(20%)、B(60%)、C(10%)、D(5%)の5段階の相対評価を行い、2回連続D評価で分限免職の対象とする維新案に対し、府総務部は「仕事の内容が違うなかで、部署単位でランク付けしては公平性を確保できない」などと問題点を指摘。対案には下位評価の厳格実施の規定は盛り込んだものの、絶対評価の維持を掲げている。
◆処分基準を修正
一方、処分基準をめぐっては、維新案も修正を迫られている。維新案では、職務命令違反への「標準的な処分」を減給または戒告と規定。過去に違反歴があれば停職。その後、指導・研修を経ても、同一命令に3回違反した場合などは分限免職とした。
しかし、最高裁第1小法廷は16日、国歌斉唱時に起立しなかった教諭を停職1カ月とした東京都教委の懲戒処分について、「裁量権の乱用で違法」として取り消しを命じた。不起立を年に数回繰り返しただけで処分を受ける場合、停職や減給理由とするには重すぎると具体的な例示もした。
判決を受け、松井知事、橋下市長とも、1回目の違反後から指導・研修を徹底するなど、維新案を修正する考えを示している。
また維新案では対象外だった警察職員について、府総務部は当初、「同じ府職員のなかで、警察職員だけを除外することは理屈が立たない」と対象に加えた。だが警察法に身分の取り扱いを定めた規定があり、削除の方向で検討している。
府総務部から687項目に及ぶ質問状を出された維新側は、年末にA4判70ページにわたる文書で回答したが、府総務部側は対案作成に当たってほとんど採用しておらず、“ガチンコ”で議論に臨む姿勢だ。
◆大阪市は静観
一方、橋下市長から職員基本条例案の対案作成を指示された大阪市も30日には素案を示す方針だが、「府の方が議論が先行している部分もある。府と知事のやりとりや、府市統合本部での特別顧問の方々の意見を踏まえて本格的な検討をしたい」と“及び腰”だ。
職員基本条例案は、教育基本条例案とともに昨年の5月府議会と大阪市議会に維新が提案。処分規定についてはほぼ同様の内容になっている。府議会では継続審議中だが、市議会では否決された。30日の府市統合本部での議論を踏まえ、松井知事、橋下市長は、それぞれ首長案を2月議会に提案する方針を示している。