日本大学に潜む「闇」の動かぬ証拠(月刊FACTA)

日本大学に潜む「闇」の動かぬ証拠(1/2)
月刊FACTA 2012年7月9日(月)11時48分配信

本誌は、日本大学の発注疑惑をめぐる警視庁の内偵捜査を2月、4月両号でレポートした。日大は4月19日付で本誌を提訴したが、詳細な内偵の様子を報ずる本誌の「協力者」をあぶり出す狙いと聞く。確かに警視庁の立ち入りを受けた日大本部には、田中英壽理事長の強権体制を危ぶむ人が多く、心あるOBたちも母校の前途を憂慮している。そもそも田中氏の大学運営を危惧する関係者の勇気ある情報提供が無かったら、本誌のレポートは日の目をみなかった。

■組織ぐるみで疑惑を隠蔽?

本誌の報道以来、田中理事長周辺の「危機管理」は鬼気迫るものがあった。暴力団と親密な関係にあるため、捜査当局がマークしている名古屋の会社オーナーに紹介された大物検察OBや警視庁捜査2課OBらが、当局の内偵の動きを探るのに躍起となり、理事長の取り巻きの政界ブローカーまで暗躍し、新聞、雑誌の動きをつぶさに掴もうとしていた。残念なことは、日大の理事や校友会の幹部が田中氏の疑惑を追及することなく、本誌を訴えたことである。組織ぐるみで不正を揉み消そうとしているのだろうか。

その最たるものが新たに発足した内部の調査委員会だ。同委員会は「事情聴取を受けた本部の職員が、警察から何を聞かれたかを聞き出し、それを田中理事長に伝える役目」と、関係者は揶揄する。責任者は理事長側近の総務担当のようだが、捜査妨害に関与した疑いが持ち上がっている。最近では、理事長の側近たちが、閑古鳥の鳴く「ちゃんこ料理たなか」(東京・阿佐谷)に繰り出し、「捜査は終わった」と気勢を上げているそうだ。理事長の権勢を恐れるあまり、理事らは「自浄作用」を発揮しようとしない。

話を元へ戻そう。本誌は、日大に食い込むアングラ勢力の脅威を指摘した。日大は全面否定し、提訴に及んだ。ならば「動かぬ証拠」をご覧に入れよう。

それは、2011年6月に起きた「不祥事」がきっかけだった。東京都内の「D協同組合」なる団体から、「賛助会員」になっているゼネコンやサブコン宛てに一枚の文書が送られてきた。その「再現文書」を掲載したので、ご覧いただきたい。

冒頭には「下記案件が発注されます。受注を希望される方は6月7日(火)または6月8日(水)当組合までお越し下さい」とあり、続いて案件が二つ。「1 お茶の水解体 7億」

「1 生産、新学科棟新築 建築17.6億 電気5.1億 設備5.3億」と書いてある。この数字こそ、決して外に漏れてはならない、日大発注工事の「予定価格」と見られている。

前者の「お茶の水解体」とは、東京都千代田区のJR御茶ノ水駅近くにある駿河台日大病院の解体工事を指し、I建設(東京)が受注した。

後者は、日大生産工学部津田沼キャンパス(千葉県習志野市)に新設する「環境安全工学科」「創生デザイン学科」の拠点となる学科棟を指し、本体工事をK建設(茨城)が受注した。

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日本大学に潜む「闇」の動かぬ証拠(2/2)
月刊FACTA 2012年7月9日(月)11時48分配信

本誌は2月号で「病院ルート」=駿河台日大病院を取り上げ、D協同組合を主宰する土木業者「D」の社長が、入札を希望するゼネコンやサブコンにファクスを送り付け、受注調整を行い、「5%」とも「6%」ともいわれるマージンを要求した疑惑を報じたが、その動かぬ証拠が、ここに掲載した文面なのである。

「ファクス文書を入手した警視庁は、公的助成を受けて建設される病院や大学キャンパス工事の入札が妨害された疑いを持ち、入札参加業者から事情を聴いた」と捜査関係者は言う。

D協同組合の関係先への内偵の波紋は大きかった。とりわけ、ゼネコン各社に再就職している警視庁OBたちは動揺した。東京都で暴力団排除条例が施行される前に、営業担当が「反社会的勢力」を介した受注工作に走ったのではないかと懸念したのだ。万一、立件されたら、営業停止は不可避。再就職中のOBを慮った捜査当局はD社社長の「素性」を洗った。その調べによると、D社はいわゆる「同和団体」を標榜している。以下、当局の文書をそのまま引用する。

〈企業向けに臭気消装置、床タイルマニュキア、ネズミ、昆虫防除、空調設備、警備、エレベーター保守管理などに関するアンケート調査を実施しながら「小型クラッシャー」(圧縮機2台セットで37万8千円)を売り込み、手口荒い〉

〈(この同和団体は)機関紙を一方的に送付し、5年間の購読料10万円を請求すると同和関連書籍を送り付けて購読要請〉

ある警視庁OBは、現役から「くれぐれも今後の入札参加は慎重に」と注意を受けたそうだ。

■「駿河台」入札が突然延期

こうした経緯は、日大にも伝えられたから、田中理事長以下の幹部は承知のことである。その結果、駿河台日大病院の新築工事は昨年夏に「12年4月着工」と発表したのに、当初予定の3月入札は大幅に延期され、着工できるかどうか不透明だ。

日大管財部の職員たちが、内偵に尻込みしたゼネコン側に「名義だけでいいから入札参加業者になってほしい」と、頭を下げる異常事態になっている。漸く参加業者が集まったというので5月中旬に設定した入札も、前日にいきなり延期となり、ゼネコン側は日大の対応に眉をひそめるばかりだった。

その延期理由も腑に落ちない。I建設による解体工事は、なぜか旧病院施設の上モノ解体だけで終了し、地中に埋設されたコンクリートの基礎部分を取り除く工事は行われなかった。困った日大側は、新築工事への参加を希望するゼネコン向けの説明会で、あろうことか「埋設物の解体工事も含めるよう求めた」と、ゼネコンの営業担当者は語り、「この解体工事はどう見積もっても7〜8億円はかかる。これを被ってくれといきなり言い出すものだから、ゼネコン側は、次々に辞退した」と内情を明かす。さらに、「I建設の言い分は7億円で受注した解体工事で、契約外の埋設物の解体までやったら採算が取れないというもの。D協同組合の仕切りに、日大の管財部も我々営業マンも振り回されている」と憤る。

この問題は日大の理事会で、医学部側から「いつになったら病院建設に取りかかれるんだ」とクレームがついたという。田中理事長はD協同組合とどのような関係にあるのか。本誌の取材に対して、日大の代理人弁護士は「関係なし」と答えた。

◎本誌特別取材班への情報提供のお願い
7月9日付で編集部内に「日本大学に潜む闇」特別取材班を発足させました。日本大学の現状を憂う教職員や卒業生の皆様の情報提供をお願いします。秘密は厳守します(匿名でも構いません)。本誌は不当な圧力に屈しません。読者及び日本大学関係者の皆様の勇気ある情報提供をお待ちしています。メールの宛先は、下記のとおりです。

日大特別取材班 [email protected]

(月刊『FACTA』2012年7月号、6月20日発行)

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