<埼玉いじめ自殺>遺族敗訴 国の責任認めず 東京地裁

<埼玉いじめ自殺>遺族敗訴 国の責任認めず 東京地裁
毎日新聞 2012年7月9日(月)20時52分配信

 05年10月に自殺した埼玉県北本市立中1年の中井佑美さん(当時12歳)の両親が「いじめの防止義務を怠った」などとして、市と国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は9日、両親側の請求を棄却した。舘内(たてうち)比佐志裁判長はいじめの有無を明確に判断せず「さまざまな要素が自殺の原因」と推測するにとどめた。いじめと自殺を巡り、市の指導を怠ったとして国の責任を問う初の裁判は、原告全面敗訴となった。両親側は控訴する方針。

 判決によると、遺書には「クラスの一部に勉強にテストのせいかも」と書かれていた。両親側は「いじめが原因となったのは明らか」と訴えたが、判決は「記載内容から具体的に特定することは極めて困難」とした。また、「市の調査が不十分」との主張については「どのような内容の調査をするかは自治体の合理的な裁量に委ねられている」と退けた。

 父紳二さんは記者会見で「佑美に顔向けができない」と述べ、母節子さんは「他の(いじめ自殺)裁判の悪い判例にならなければいいが」と声を落とした。

 北本市教委は「本市の中学校に在籍していた生徒が自ら命を絶ったという悲しい出来事は判決がどうであれ変わらない。ご冥福をお祈りします」とコメントした。【鈴木一生】」

 ◇証拠集め難しく

 いじめが原因とみられる自殺を巡る裁判では、前提となる「いじめの存在の有無」が争われることが多い。加害者側や学校側が存在を否認するだけでなく、被害者が家族にも事実を隠す傾向が強いためだ。証拠の収集が難しく、遺族は苦しい裁判を強いられる。

 06年に岐阜県瑞浪市の中2女子生徒(当時14歳)が自殺したケースでは、学校や市教委は自殺後のアンケートからいじめを認めて謝罪したが、岐阜地裁は昨年11月、いじめの存在を認めず賠償請求を棄却した。北本市のケースは、学校がいじめ自体を否定する調査結果を出し、両親側が訴えた「調査の不十分さ」も退けられた。

 いじめ問題に取り組むNPO「ジェントルハート プロジェクト」の武田さち子理事は「学校の調査がいいかげんであるほど、裁判で学校の責任認定は難しくなる」と指摘。鹿児島大法科大学院の采女(うねめ)博文教授(民法)は「裁判に頼らない解決法も重要で、専門家による第三者機関の設置など学校以外の目を入れることが求められる」と話す。【鈴木一生】

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いじめ自殺、認定に高いハードル
TBS系(JNN) 2012年7月10日(火)1時59分配信

 中学1年の娘を自殺で亡くした両親が国などを相手取り「いじめ防止の対策を怠った」として起こした異例の裁判。明らかになった「いじめ隠し」とも思われる実態を裁判所はどう判断したのでしょうか。

 「本当に良い判決を佑美に報告できなくて、本当に残念です」

 母親は声を振り絞り、無念を口にしました。自殺は学校でのいじめが原因だったのか・・・中学1年生の中井佑美さん(当時12)の自殺をめぐり両親が北本市と国に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は両親の訴えを全面的に退けました。

 「生きるのに疲れました。本当にごめんなさい。死んだのは、クラスの一部に、勉強に、テストのせいかも」(佑美さんの遺書)

 佑美さんが自ら命を絶ったのは7年前のことでした。

 「今年、誕生日が来れば20歳になるけど、何か想像できない。中学1年の子どものまま止まってしまっているので」(佑美さんの母 中井節子さん)

 真相解明を・・・北本市と文部科学省を相手取り起こした裁判。しかし、この中で明らかになったのは“いじめ隠し”とも思われる実態です。

「一字残らず黒塗りなので何が書いてあるかわからない」(佑美さんの父 中井紳二さん)

 文部科学省が中学校に対して行った聞き取り調査に関する資料はほとんどが黒塗りに。中学校が実施した生徒のアンケートも「処分した」として一切開示されませんでした。

 “いじめ隠し”とも言える問題は滋賀県大津市でも明らかになりました。生徒へのアンケートで、自殺した生徒が「担任に泣いて電話していた」という回答がありましたが、教育委員会は担任にのみ確認し、生徒には聞き取りをしていなかったといいます。

 「『いじめられている』という内容でなかったと聞いています」(大津市教育委員会)

 教育現場での問題について、専門家はこう語ります。

 「隠蔽体質というか、自分たちの評価が下がるのを恐れている。学校の評価、担任の評価、教育委員会の評価。調査するときには第三者機関でなければダメ」(教育評論家 尾木直樹氏)

 自殺の原因が“いじめ”となることはまれです。児童・生徒の自殺は毎年100人を超えているものの、2010年度、自殺した状況としていじめの問題が挙げられているのは147人中4人にとどまっています。

 「例えばコップの水がだんだんたまっていって、最後の一滴があふれて自殺に至ることがあると思う。裁判所の判断はその一滴をとらえて、それは死ぬほどのいじめではないと」(佑美さんの父 中井紳二さん)

 9日、東京地裁は「いじめを受けていたとは認められず、学校が実態を隠しているとは認められない」と指摘。中井さんの望む答えはまたも得られませんでした。中井さんは控訴する方針です。(09日23:53)

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