大津市 いじめ自殺 8月27日分

大津・中2自殺 立件判断秋以降か 県警、教諭ら再聴取方針
産経新聞 2012年8月27日(月)14時53分配信

 大津市で市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が飛び降り自殺した問題で、滋賀県警による関係者への事情聴取が難航し、いじめをしたとする同級生3人に対する暴行容疑などでの立件判断は年内を視野に秋以降にずれ込む可能性が高いことが27日、捜査関係者への取材で分かった。先に聴取した教諭らと生徒らの証言が食い違いを見せているためで、県警は確認のため教諭らへの再聴取を行う方針を決めた。

 県警は27日までに、夏休み期間中に行ってきた、中学校が実施したアンケートでいじめを目撃したと回答した生徒約100人への聴取をほぼ終了。体育大会が行われた大津市内の競技場を利用して、大会の際に行われた疑いのある暴行などについての実況見分も行った。

 県警は生徒らへの聴取前に教諭らへの聴取を実施していたが、生徒の聴取の中で、「先生も見ていた」などという、教諭らの証言にはなかった内容が出てきており、再度、確認作業のため教諭らへも聴取する必要が出てきた。

 また、アンケートで自殺の練習をさせられていたとするいじめをめぐっては、男子生徒が、窓から身を乗り出して練習させられていたとの見方もあった。

 しかし、生徒への聴取の結果、同級生らが窓から身を乗り出すようなしぐさをし、男子生徒に「お前もやってみろ」と要求したが、男子生徒は拒否し、実際にはやっていなかったことなど、詳細も判明してきた。

 県警は暴行容疑を軸に恐喝、強要など6つの容疑で慎重に捜査を進めているが、膨大な証言の精査に予想以上の時間を必要としており、立件の可否判断は大幅に遅れている。

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いじめに「第三者」なし 向き合わない教育現場
産経新聞 2012年8月27日(月)12時27分配信

 おかしなことになってきた。大津市の市立中学2年の男子生徒がいじめを苦に自殺した問題で、大津市教委の教育長がハンマーで殴られ重傷を負う事件が起きた。確かに、教育長の責任逃れの対応には批判が強かったが、暴力に訴えるのは論外である。

 ほかにも殺害・爆破予告や刃物を同封した脅迫文、脅迫電話が相次いでおり、滋賀県警が被害届を受理しただけで約40件にのぼる。このため市教委の入る市役所本庁舎は警備員を増員し、学校関係者の自宅も機動隊員が常駐して身辺警護にあたっている。

 余計な騒ぎに邪魔されて、肝心のいじめの調査、捜査は、まもなく夏休みが終わるというのに、まだ先が見えない。これでは自殺した生徒は浮かばれない。

 もう一度、問題の本質に立ち返るために、元中学教諭の東村元嗣さんからいただいた手紙を紹介したい。

 東村さんは堺市などの公立中学で約40年間勤務し、定年後はいじめや不登校対策として設けられた「心の教室」の相談員を務めた。豊富な体験が綴(つづ)られていたが、なかでも「いじめに第三者なし」という言葉が印象に残った。

 東村さんはいじめへの対応をこう列挙している。

 担任の教師は、生徒を見ればまず声をかけ、その返事や教室の雰囲気などからサインをキャッチする。見て見ぬふりは絶対にしない。異常は素早く全教員に連絡して、学校全体で問題を共有する。

 家族が子供の異変をキャッチする。帰宅したら、学校であった楽しい話から順に聞く。話し始めたら、途中でコメントを挟まず、最後まで聞いてやる。異変に気づいたら、すぐに学校へ連絡する。

 教室では絶えず生徒たちに意見交換させ、発表の機会をつくる。いじめを受けた生徒には悔しかったことを手記にしてもらい、それを教室で読み上げて感想文を集め、二度といじめがないように誓い合う。

 教師、生徒、保護者がそれぞれ当事者なのである。もちろん教育委員会も含まれる。

 手紙から職員会議の雰囲気がうかがえる。いじめが起きると、担任の教師は“犯人捜し”にパニック状態となり、あるいは自信のない教師は助けを求めて言い訳に終始する。他のクラス、学年の教師からは、ああせい、こうせい、とさまざまな意見が出てまとまらず、結果、対応が後手後手になるという。

 こんな場面に遭遇して、東村さんは教室で「良い先生とは、良い生徒をつくること。良い生徒は、良い先生をつくるんやで」と話したそうだ。

 教育現場は閉鎖的で、大津の中学校でも、いじめにどう向き合ったのかうかがい知れない。誰もが「第三者」のように風当たりを避けている。

 真相を明らかにし、悲劇の再発を防ぐために、当事者は口を開くべきだ。それを脅迫やネット上に飛び交う誹謗(ひぼう)、中傷が妨げる。だから悪質で余計な騒ぎだというのだ。(論説委員 鹿間孝一)

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