教師からキスなどの性被害 「恋愛だったんでしょう」の声に傷ついた〈AERA〉

教師からキスなどの性被害 「恋愛だったんでしょう」の声に傷ついた〈AERA〉
AERA dot. 2019/7/25(木) 17:00配信

 性暴力を許さない声をあげる「フラワーデモ」。かつて性被害を受けた人たちが安心して傷を語れる癒しの場として重要な役割を担っている。被害者たちの声から意識されてこなかったことも見えてくる。

*  *  *
 多くの人が#MeTooと語ることで、今まで見えづらかった問題が可視化していく。トランスジェンダーの男性(30)はスピーチで、性的マイノリティーが性暴力を受けたときに強いられる現実を訴えた。

 彼は元は女性で、現在は男性として生活をしている。恋愛対象は男性。半年前に掲示板で知り合った男性とホテルへ行き、合意のない性行為をされ、首を絞められた。彼の首には青いアザが残った。だが、彼を苦しめたのは、殺されるかもしれないという恐怖だけではなかった。

「その後、性暴力の被害支援をする電話相談へ電話をしたら『声が男ですよね。男性の方はちょっと』と言われました」

 この第一声に対し、彼はとっさに言った。

「自分は元は女性なんです。ここしか相談できないので、電話を切らないでください」

 結局はLGBTのための相談窓口を紹介されるだけ。けれども案内されたLGBTの支援窓口は性暴力被害には対応しておらず、すぐに支援には結びつかなかった。

 彼は戸籍上も男性に変更しているが、女性器は残っている。それが、警察へ被害届を出そうとしたときに問題になった。

「戸籍上は男性とはいえ女性器がある状態で、意図しない性行為をした場合に、法律上どう扱うかがわからない。あなたみたいな事例はないし、そういう人をとりあげたくない、と言われたんです」

 掲示板を利用しての出会いだったこと、相手と一緒にホテルに入って出たことも、合意があったとしかみなされないと言われた。録音や録画でもない限り、性暴力を受けたことを立証もできないし、そもそもあなたが悪いと責められもした。

「逃げればよかったとも言われました。でも、恐怖で逃げられなかったんです。言うことをきかないと殺されるんじゃないか、追いかけられて何かあったらどうしようと」

 彼は身長が150センチほどと小柄。体格差のある人を前に、恐怖で足が動かなかったという。結局、必死に話したことは警察では受け入れられず、被害届は出せなかった。

「トランスジェンダーであることを理由に、社会的に排除や差別されることもあり、当事者はなかなか声をあげることができないんです。だから性被害にあっても泣き寝入りをしている友人もいます。被害を受けた当事者が適切な支援を受けられるよう、これからも僕は勇気をもって発言し続けます」

 教師から受けた性被害の告白をしたのは石田郁子さん(41)。石田さんは15歳から19歳まで、教師からキスをされるなどの性被害にあってきた。

 数年前、養護施設の教師が生徒に性暴力をふるったとして提訴された裁判を傍聴したことが、自分が受けたことも性被害だと気づくきっかけになった。でもその話をしても返ってくるのは、「今さら何言ってるの?」「恋愛だったんでしょ」という言葉ばかり。それにも傷ついた。

「その教員はまだ学校にいます。教育委員会に証拠も出して訴えましたが、処分してくれません。それは子どもたちの安全を全然考えていないということです」

 石田さんは民事訴訟を起こし、実名で記者会見も行った。

「バッシングされるかと怖かったんですが、私も同じような被害にあいましたとか、応援しますというような言葉が多かった。これからも粘って、訴えていこうと思っています」

 そう言って、次回のデモにも参加すると約束した。

 これまでにも多くの性暴力がニュースとなり、伊藤詩織さん、小林美佳さん、山本潤さん、東小雪さん、田中真生さんらが実名で自身や家族の性被害を告白してきた。だが、性被害を受けた多くの人が痛みを抱えながらも、声をあげられずにいた。

 フラワーデモの発起人の一人で作家の北原みのりさんは言う。

「まずは自分を癒やし、相手を癒やすという場所が求められていたのかもしれません。#MeTooの声をあげるには、『あなたを信じます』という#WithYouが必要なのだと思います。日本の社会には#WithYouが足りなかった。性暴力に対して悲しみという怒りを表現し、花を持って優しい共感を表明するデモだから、沈黙が破れたのだと思います」

 いやなものはいや、おかしいものはおかしい。そんな声がつぶされない社会になるまで、あきらめずに声をあげていかなくてはならない。

 次回のフラワーデモは8月11日に全国各地で開催される。(編集部・大川恵実)

※AERA 2019年7月29日号より抜粋

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする