(朝鮮日報日本語版) 他人の論文で博士号を取得、公務員に罪悪感ゼロ
朝鮮日報日本語版 2013年3月23日(土)12時19分配信
「最高のスター講師」として知られる金美敬(キム・ミギョン)氏(48)の修士学位論文をめぐって盗作の事実が判明したのに続き、今度は中央省庁の官僚の博士学位論文について盗作疑惑が浮上した。ソウル市内の私立M大学は20日、「政府機関の課長A氏が、本学の研究成果をそのまま書き写した論文で博士学位を取得した。当該大学に対し、A氏の研究についての倫理調査を依頼した」と発表した。M大学の関係者によると、A氏は今年2月「国際標準に基づく記録管理システムの適合性評価の指標に関する実証的研究」と題する博士学位論文を、ソウル市銅雀区にある私立大学の大学院に提出、学位を取得した。A氏はこの過程で、M大学が実施したアンケート調査の内容はもとより、表やグラフの出典を記載せず、そのまま書き写した。M大学は「A氏が書き写した研究報告書は昨年12月、本学がA氏の勤務先に提出したものだ」と主張している。
A氏は本紙の電話取材に対し「うちの機関で研究業務を発注し、M大学が研究を行った。研究が終わり、権限がうちの機関に帰属したため、研究成果のうち適切な部分を論文に記載した」と主張した。「盗作」という概念は全くなかったというわけだ。一方、ある大学教授は「このような行為が『盗作』 に当たることも知らず、またこのようなことをしてもいいと考えるとは、あきれてものが言えない」と語った。
ある中央省庁の高級官僚は「学位を取得した官僚の多くが(大学院の)授業は出席するだけして、論文は誰かに代筆させればいいと考えている。実際のところ、激務をこなしながら大学院に通い、学位を取得しようということ自体、無理な話だ」と話した。その上でこの官僚は「どうしてそんなことができるのか分からないが、一般大学院に登録した後、勤務時間中に(授業に)顔を出し、出席チェックをして職場に戻るケースもある。登録さえすれば、代わりに論文を書くアルバイトもいるため、学位の問題は簡単に解決するという話も聞く」と語った。
夜間の大学院で修士学位を取得した地方公務員は「大学院に通っている公務員たちの間では、論文代筆業者の価格や、代筆者についての情報をひそかに共有している」と話した。
公務員たちが論文を盗作、代筆する慣行は、盗作に寛大な韓国社会の悪癖と関係している。ある大学の関係者は「盗作の事実が判明しても、一時的に恥をかくことにはなるが、社会活動や経歴に問題が生じるわけではない。盗作を容認する学界や社会の空気が問題だ」と語った。
韓国では、盗作が問題になった公職者たちが、何ら制約なく活動している。2006年には、金秉準(キム・ビョンジュン)副首相兼教育人的資源部長官(当時)が、国民大の教授だった1987年、教え子の博士学位論文を書き写して学会誌に発表したという疑惑が浮上し、就任からわずか13日後に辞任した。だがその後、大統領の諮問機関である政策企画委員会の委員長や、大統領特別補佐官(政策担当)などを経て、国民大の教授職に復帰した。また、大統領府の許泰烈(ホ・テヨル)秘書室長も、論文盗作疑惑が浮上した際、謝罪しただけで済まされ、人事には何ら支障が生じなかった。
一方、先進国では論文の盗作は「犯罪」と見なされる。事実が判明した場合、社会と学界の両方で罰を受ける。11年3月、ドイツのグッテンベルク国防相は博士学位論文の盗作が判明し辞任した。正確な出典を示さず、論文の一部を書き写したとして、博士学位もはく奪された。昨年4月には、ハンガリーのシュミット・パール大統領も、1992年に書いた博士学位論文について盗作が判明し、大統領を辞任するとともに、博士学位も取り消された。
ソウル大社会学科のイム・ヒョンジン教授は「短期間に学位を取得しようとする公務員や公職者たちは、学問に臨む者としての規範がないため、このような問題が生じる。このような行動に目をつぶる韓国の教授たちにも落ち度がある」と話した。