<武道必修化>中学柔道、事故防止 ヘッドサポーター有効
毎日新聞 2013年5月14日(火)18時14分配信
中学校の授業「武道」で行われる柔道を巡って、安全対策が課題になる中、頭部の事故発生率を大幅に下げる「ヘッドサポーター」を、生徒に着用させる学校が出ている。このサポーターは1960年代に大阪府警察学校で防護効果が実証され、現在も利用。同府内の一部の少年柔道教室でも活用されている。柔道事故被害者の関係者からは「ヘッドサポーターはあった方がいい」との声が上がっており、着用の広がりが期待されている。【岡村崇】
武道は2012年度に必修化され、文部科学省によると、柔道は64%選択され最も多い(12年4月現在)。柔道については、中高の部活動の事故で死傷者も出ている。独立行政法人「日本スポーツ振興センター」によると、05〜11年度、中学校の柔道の部活動中などに死亡した子供たちへの災害共済給付が10件も発生。大外刈りで投げられた際に畳で後頭部を打ったケースなどがあった。
柔道の指導経験が乏しい教員が多いことも課題で、文科省は指導に関する資料を配布し、各都道府県教委が教員対象の安全講習会を開いたりしている。
ヘッドサポーターは大阪府柔道連盟の加藤俊雄・元副会長(故人)が考案。綿素材で頭や耳をカバーし、額の部分にはゴムが入れられ、後頭部にはスポンジなどの緩衝材が詰められている。同連盟によると、60年代に柔道指導をしていた府警察学校で、頭部を負傷する初任科生が多かったことから対策を検討。帽子業者の協力を得て開発したという。
府警察学校で同校の段外者2778人を対象にした調査によると、頭部の負傷事故発生率は、着用前は63年度1・3%▽64年度2・9%▽65年度2・7%。それが着用後は、66年度0・8%▽67年度0・5%▽68年度0・6%と改善された。
大阪府高槻市立第七中学校は安全対策の一環として、必修化前の09年度から、授業でヘッドサポーターを導入した。同市の少年柔道教室「ゆう柔道クラブ」でも、小中学生らがサポーターをつけ、指導員の井原興一さん(70)は「『頭を打つことは危険』と子供が自然と覚えていく」と効果を指摘した。
一方、柔道事故で死亡したり障害を負った子供の家族でつくる「全国柔道事故被害者の会」の村川義弘会長は「ヘッドサポーターはないよりはあった方がいい」と一定の評価をした上で、「頭を打たなくても、脳が揺れることによる事故もある。国が具体的な指導法に言及すべきだ」と指摘した。