iPhoneを手がける台湾の電機大手・ホンハイ精密工業(フォックスコン)が、日産自動車との連携に前向きな姿勢を示している。ホンダとの合併交渉が白紙となる中、海外メディアはホンハイの動きに関心を寄せている――。 ■2カ月以内に「日本の自動車メーカー2社」と提携との報道 日本の自動車企業とのパートナーシップを模索しているホンハイが、具体的な企業として日産を選ぶ可能性がありそうだ。 現在のところ提携先として確実視されている企業に、少なくとも日本の三菱自動車がある。共同通信が3月20日に報じたところによると、三菱自動車はEV製造コスト削減のため、ホンハイに生産を委託する計画だ。 関係者の話では、早ければ数週間以内にもホンハイとの計画を発表する見込みだという。三菱は東南アジア市場での強みを生かし、ホンハイ製造の車両を自社EVブランドで販売したい計画だ。 この動きに先立ち、米著名自動車メディアのモーター1が3月17日、予兆となる報道を行っていた。ホンハイのリウ・ヤング(劉揚偉)会長は、2カ月以内に「まだ明示されていない日本の自動車メーカー2社」との間で、EVの設計・製造サービスに関する契約を締結する計画を持っているという。うち1社が三菱を指していたとみられる。 残る1社は報じられていないが、過去の経緯を踏まえると日産との解釈が成り立ちそうだ。劉会長は2月、日産・ホンダの合併交渉が破談する直前に、日産との協力に関心があると表明していた。台北タイムズ紙は2月、ホンハイが日産やホンダにも協力を打診していると報じていた。 ホンダとの関係が白紙になったいま、ホンハイが再び熱い視線を日産に送っている可能性は十分に考えられる。後述するように日産の元経営陣が現在ホンハイのEV開発を指揮しており、人脈上もコネクションが深い。 ■合併破談と格下げで苦境に立つ日産 提携はあくまで技術的ノウハウの向上を意図したもので、買収や経営への関与の意向はないという。ホンハイはルノーが持つ日産株36%のうち15%の取得を検討中だというが、発行済み全株式の過半数には遠く及ばない水準だ。 日産はホンダによる子会社化の提案を蹴って批判を浴びた後、新たな提携先を探っている状態だ。仮にホンハイによる提携の話が進めば、経営上の独立性を保ちたい日産の方針と強く合致する。 リウ会長は「業務上の必要があれば(株式取得を)検討するが、株式取得は目的ではなく、協力関係の構築が目標だ」と述べている。資本参加が狙いではなく、EV技術の獲得を重視していると強調した。