「市教委のミス」 報告遅れで上田知事 川越・男子中学生暴行
埼玉新聞 2012年9月15日(土)15時50分配信
川越市立中学校の男子生徒が同学年の生徒から暴行を受けて重体になった事件で、上田清司知事は14日の定例会見で、同市教育委員会がいじめの事実を把握しながら県教委に半年近く報告しなかったことについて「川越市教委が当然、県教委に報告すべきこと。同市教委のミス」と述べた。
知事は教委という制度に関し、「政治の影響を受けずに教育行政ができるメリットがある一方で、責任の主体が見えにくく、はっきりしない場合がある」と指摘。「だから廃止の議論が出てくる。選択制(廃止を含め、複数の仕組みの中から各自治体が選択)にしたらいいのではないかと思っている」との考えを示した。
学校のいじめ問題解消について、知事は「本気度が試されている。県教委がリーダーシップを発揮し、全県的な運動を展開すべきだ」と話した。
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川越の中2暴行:事件受け、いじめ情報共有へ県教育局検討 要綱に報告義務なし /埼玉
毎日新聞 2012年9月15日(土)12時29分配信
川越市で今年1月に市立中学2年だった男子生徒(15)が同級生3人から暴行を受け意識不明になっている事件で、川越市教委からいじめの事実について報告がなかったことは問題として、県教育局は14日、いじめの情報共有化に向け、検討に乗り出す方針を決めた。同局の要綱では暴力行為や脅迫などの問題行動を報告するよう市町村教委に求めているが、いじめは含まれていなかった。【林奈緒美】
同局生徒指導課は学校で問題行動が起きた場合、同課に報告書を提出するよう市町村教委に求めている。
しかし、対象となる問題行動15項目は暴力行為や脅迫、窃盗などで、いじめは含まれない。背景にいじめがあっても、報告書に記入するかどうかは市町村教委に委ねられている。
一方、川越市教委は文部科学省が実施している児童生徒の問題行動調査で、今回の暴行事件を「いじめ」に計上して同局に回答。しかし、報告が件数だけで、具体的な学校名や事案内容が不明だったため、同局は今回のケースが「いじめ」とは気付かなかった。
同局は大津市や草加市などでいじめ問題が発覚したのを受け、転校などを除くいじめ未解消の108件を追跡調査していたが、今回のケースは加害生徒が逮捕されたことで結果的に「解消」に分類されていたため、文科省の調査時と同様に気付くことができず、追跡調査の対象からも漏れていた。
同課は「情報が無ければ適切な指導はできず、いじめを把握できなかったことを反省している」としており、要綱の見直しや、報告書提出の対象項目にいじめを追加するなど対策の検討を始める。
◇「市教委は隠蔽体質」半年公表遅れ、川越市議会でも批判
14日始まった川越市議会一般質問でも、市立中学校でのいじめ問題が取り上げられた。事件の背景にいじめがあったことを3月下旬に把握していたにもかかわらず、市教委が半年近く遅れて公表し、議会にも報告してこなかったことについて、石川智明議員が「市教委に隠蔽(いんぺい)体質がある」と指摘した。
市教委側は同議員の質問に対し「(当時は)傷害事件として捜査中で少年審判の途中だったので、議会にはいじめとしての報告はしなかった。認識が不十分で誠に申し訳ありません」と陳謝した。
川合善明市長は「事件は全く残念で、いたましく、被害生徒の一日も早い回復を願っている」と述べ、「重大な傷害事件という認識が強く、いじめの事実を把握した後も、いじめとの関連性が薄いものととらえてしまったのではないか」と、公表が遅れた原因を推測。「教育現場には一定の配慮がいるとは思うが、再発を防ぐ観点からも積極的に情報公開を行っていくべきだ」と強調した。【中山信】
9月15日朝刊