公文書偽造、市教委でも 「年度またぐ」意識欠如 春休みに工事集中/さいたま市
埼玉新聞 2012年9月29日(土)13時13分配信
教育現場にも、衝撃が走った。28日に市の調査委員会が公表した年度繰り越しに関わる不適正な事務処理。当初は都市局だけの問題と思われていたものが他局でも見つかり、収束の気配が見えてこない。多数の問題が発覚した学校現場からは「やむを得ない事情もある…」と複雑な声も聞かれる。
「年度繰り越しに対する意識が欠けていた」。調査委員長を務める比企邦雄行政管理監は会見で、そう陳謝した。本庁、区役所、学校現場…。「自己申告」による調査で、195件の偽造が発覚したことに言い訳のしようもなく、頭を下げるしかなかった。
偽造の手段は、決して複雑なものではなかった。128件の偽造が見つかった教育委員会では、業者が市教委に工事の完了報告書を提出する際、完了日を空欄で提出。工事が年度内に終わったように見せかける記入を、市教委がしていた。こうした行為がいつごろから行われていたかは明言を避けたが、「慣例的になっていた」(原修学校施設課長)という。
学校の主な工事個所は▽トイレの水回り▽体育館雨漏り修繕▽特別支援学級対応修繕▽階段手すり修繕―など。学校現場の工事で、なぜ偽造が多かったのか。原課長は「新学期直前にならないと、修繕をすべきか否かの判断が難しいケースがある」と一例を挙げる。翌年度の児童生徒数が確定するのは、2〜3月ごろ。そこから必要な工事を発注するため、ある市立小学校長は「年度末に工事が集中するのはやむを得ない」と話す。
また「春休みは学校にとって、貴重な工事の時期」(別の小学校長)という。児童生徒の安全などを考えると、通常の授業時に工事をすることは難しく、必然的に春や夏などの長期休みに工事が集中してしまう。
「学校現場に『年度をまたぐ』という意識は少なく、行政感覚が欠如している人もいる」と指摘する学校長もいる。年度内に工事を終わらせることよりも、児童生徒への影響を考え、長期休みまで工事を行わない。そんな事情が優先されるからだ。「年度繰り越しはコンプライアンス(法令順守)上、あってはならないこと。だが、実態を踏まえると、単年度予算は限界がある。両年度にまたがる予算執行ができるなどの運用ができればいいが」(市教委幹部)。教育現場の悩みは続く。