<仙台いじめ自殺>説明責任果たさぬ学校
河北新報 2015年8月29日(土)9時30分配信
◎届かなかった叫び(上)沈黙
<具体名覆い隠す>
具体名をひたすら覆い隠す記者会見だった。
仙台市教委は21日夕、仙台市立中1年の男子生徒=当時(12)=が自殺していたことを明らかにした。
「昨年、市立中1年の男子生徒が自殺した」
「第三者委員会の調査で、校内のいじめが自殺と関連性があるとされた」
市教委が市役所で開いた会見で説明したのは、この2点がほぼ全て。男子生徒の氏名や年齢、学校名はもとより、実際には昨年9月下旬だった自殺の時期を問う質問にも答えなかった。
詳しい説明は拒み、公表遅れの理由なども含め「遺族の意向」と繰り返した。
情報管理は徹底されていた。市教委が宮城県教委に報告したのは20日。発表前日のことだ。
「県教委と市教委の意思疎通が十分でなかったのは大変残念」。村井嘉浩知事が24日の定例記者会見で苦言を呈するほどだった。
<生徒らも違和感>
市教委はその後、自主的に補足説明する場を設けていない。「事実は公表した」「遺族の意向もくんだ」という体裁を整えたことで責任を果たしたかのようにも映る。
具体名を消し去った「生徒の死」は事実の重さを揺るがしかねない。
24日朝、男子生徒が通っていた学校であった臨時の全校集会。校長が読み上げたのは、市教委が全市立学校に配布した再発防止を訴える緊急アピール文だけ。自校でのことには一切触れなかった。
「自ら命を絶ってはならない。私たち大人が必ず皆さんを守る」。抽象化された言葉は違和感を持って受け止められ「なんか違くない?」とささやく生徒もいたという。
学校側も「事実をつまびらかにしない」という姿勢では一貫している。
男子生徒の自殺後、担任の女性教諭は「(男子生徒は)家の都合で転校しました」とクラスメートに説明。学校はいじめに加わったとされる11人の生徒に実態調査の過程で事実を伝えたものの、他の生徒への説明はいまだにない。
<「先生たち怖い」>
市教委の発表後、学校周辺で取材する報道関係者らに対しては、同校の教諭らが「うちの学校だという証拠があるのか」と否定を装った。
校長は「市教委に聞いてほしい」の一点張り。28日夜の河北新報社の取材には「駄目、駄目。警察呼びますよ」と拒否した。
市教委と学校は説明責任を果たせているのかどうか。「遺族の意向」を理由にした沈黙の前で、生徒や保護者の間では「本当のことが知りたい」との思いが膨らむ。ある生徒は「先生たちの対応が怖い」とつぶやく。
男子生徒は「いじめが収まらない」と自殺の直前に言い残していた。12歳の少年が絞り出した叫び声が、実体を持って受け止められずにいる。
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仙台市立中1年の男子生徒がいじめを苦にして自ら命を絶った。学校や市教委の対応には問題点が次々と浮かび上がり、地域に疑問と不信が渦巻く。生徒の死は何を問い掛けているのか。経緯と現状を検証する。
(仙台・中1いじめ自殺問題取材班)