森口氏の国助成事業、研究実態なしなら返金要請

森口氏の国助成事業、研究実態なしなら返金要請
読売新聞 2012年10月26日(金)7時2分配信

 iPS細胞(新型万能細胞)からできた心筋細胞を移植したと虚偽発表した森口尚史(ひさし)氏(48)について、国が助成金などを支出した研究が焦点となっている。

 実態がなければ、返金要請が検討されるほか、専門家は「森口氏が詐欺罪に問われる可能性もある」と指摘している。

 森口氏はiPS細胞関連の研究を行うとして、内閣府や、経済産業省が研究事業を委託した千葉県の外郭団体から、雇用主の東京大を通して資金の提供を受けていたほか、厚生労働省や文部科学省が助成した研究にも関わっていた。

 内閣府は、若手や女性研究者を育てる「最先端・次世代研究開発支援プログラム」の一つとして、東大病院形成外科・美容外科助教の三原誠医師(37)が代表を務める研究に、2010〜13年度、計約1億6380万円を助成した。臓器の凍結保存技術がテーマで、約970万円は森口氏を東大の特任研究員として雇用する経費に支出された。森口氏が担当する「iPS細胞等の保存技術開発」が柱の一つだったが、三原医師は取材に、「『特許の関係があるので』と言われて詳しく聞けず、説明できない。米ハーバード大でやっていると思っていた」と述べた。だがハーバード大は、森口氏との関係を否定している。内閣府は「実態がなければ、助成金の返還要請を検討する」という。

 厚労省は、1998〜2006年度に森口氏が関わった3件の研究(補助総額4925万円)について、主任研究者に調査を指示した。文科省も01〜05年度に実施されたという研究2件(補助総額約2070万円)で、東大などの調査結果を待っている。

 経産省が千葉県産業振興センターに10〜11年度で委託した研究事業(総額約4010万円)も、森口氏は三原医師とiPS関連の研究を担当。内閣府が助成した研究と似た「幹細胞・iPS細胞の凍結・解凍装置開発」で、東大が同センターからの再委託先とされていた。10年9月〜11年3月、同センターは東大に対し、森口氏の研究員費として、約230万円を支出。すでに東大での実験結果が報告されており、同センターは実態の有無を調べている。

 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「国の費用による研究に実態がなく、森口氏に、報告書にあるような研究をする意思も能力もないことが立証されれば、詐欺罪が成立する可能性もある」としている。

 森口氏は今月19日、東大病院の特任研究員を懲戒解雇された。

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