いじめ:発覚、現場の対応 やられたうちの子がなぜ我慢 加害者の転校は困難 /埼玉

いじめ:発覚、現場の対応 やられたうちの子がなぜ我慢 加害者の転校は困難 /埼玉
毎日新聞 2012年11月21日(水)11時34分配信

 実際にいじめが発覚した場合、教育現場は今、どのような対応を取っているのか。文部科学省などは、いじめた側の子どもたちを出席停止にする一方で、いじめられた側の子どもたちを転校させるなど配慮するよう学校側に求めているという。しかし、こうした措置は子どもの人権問題なども絡み、実際はほとんど行われていないのが実情だ。【林奈緒美】
 上尾市の会社員の男性(43)は、小学5年の次男(11)の言葉に耳を疑った。「同級生に取られた」。母親が集めていた記念硬貨がなくなったことを問いただすと、次男は力なくこう答えたという。
 男性の求めに応じて学校側が調査。その結果、次男が7月以降、同級生らから背中をたたかれるなどの暴行を受けた上で、6700円を脅し取られていたことが明らかになった。
 学校はいじめの事実を認め、いじめた側の3人を校長室に移し、別室授業を行った。ところが1週間後、学校は3人の別室授業をやめた。男性は別室授業の継続や3人の転校を求めたが、学校側が応じることはなかった。上尾市教委指導課は「いじめが続く心配はないと判断した。いじめた側にも教育を受ける権利があり、長期間、権利を制限したり転校を強制することはできない」と説明する。
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 県教育局生徒指導課によると、いじめが主な原因の出席停止は01年度以降3件のみ。同課は「出席停止は懲罰ではない。言い分が食い違えばいじめの認定が難しいうえ、その間は家庭の負担も増えるので、慎重な検討が必要」と説明する。
 09年度からの3年間で市外の学校などに転校した小中学生は38人。大半はいじめを受けた児童・生徒で、いじめた側を学校が転校させることは子どもの権利を侵害するため、不可能に近いという。
 同課は「悪質ないじめは論外だが、隔離することが本質的な解決にはならない。子どもが楽しく学校に通うためにどうすればいいか。今後も考えていきたい」と話している。
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 次男は10月以降、休学中だ。男性は「両者を会わせないことが最大の再発防止。被害にあったうちの子が、我慢しなければいけないのはおかしい」と憤る。男性は10月末、警察に被害届を提出した。
11月21日朝刊

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