両親が告発 兵庫中2男子自殺に「指導死」の可能性〈週刊朝日〉

両親が告発 兵庫中2男子自殺に「指導死」の可能性〈週刊朝日〉
dot. 2014年5月15日(木)7時11分配信

 2月22日、兵庫県の中2男子、万壽本(まんじゅもと)拓也君(当時14歳)が自宅で自殺した。遺書はあったものの理由が思い当たらない両親は、学校が行った生徒へのアンケート調査を入手。そこから見えてきたのは、周りの生徒にけしかけられたケンカで拓也君が隣のクラスのA君にケガをさせ、A君の親が警察に被害届を提出した1カ月前の暴力事件だった。警察が学内に入り現場検証をする異常事態が、拓也君を追い詰めた可能性がある。

 教育評論家の武田さち子氏は学校側の対応に問題があったと指摘する。

「ただでさえケガをさせてしまい動揺している拓也君に、先生は何もしてくれず、警察の捜査が周りで進んでいくのを見て、誰も信じることができず孤独を感じ、逃げ場をなくしてしまったのでは。『指導死』の可能性も考えられる」

「指導死」とは、生徒指導をきっかけに子供が自殺した父母らが使い始めた言葉だ。「『指導死』親の会」代表世話人で、息子を亡くした大貫隆志氏もこう続ける。

「被害届を出すことは間違っていなかったかもしれないが、今回は明らかに学校の段取りミス。被害届を自分の知らぬ間に出されて、そのことが精神的なショックを拡大したのでは。周りから聞くことで裏切られた感覚になり、孤立させられてしまったのでは……」

 同校のアンケートでは、生徒、保護者が学校側に不信感を抱き、信頼関係が築けていない実態が浮き彫りになっている。

 生徒は<今の先生たちに何を伝えても無理>。保護者は<学校側と亡くなった拓也君のお父さんの話が違いすぎる。うそや隠し事が多いです><(学校は)双方の話をちゃんと聞き(生徒らに)説明したとおっしゃっていましたが、本当にそうだったのでしょうか>。

 悲劇が再び繰り返されないためにはどうしたらいいのか。校内で暴行があったときに、教師が具体的に取るべき行動マニュアルはあるのか。たつの市教育委員会、兵庫県、文部科学省に問うと、回答はすべて「こういう場合はこうするといったような、具体的なものはない」。

 前出の武田氏によると、2011年に大津市で中学2年生の生徒がいじめを苦に自殺した後、暴行を受けたにもかかわらず被害届が警察に受理されなかったことが問題化し、文科省から、警察へ相談・通報し、連携を取るよう通知が出されている。そのため、被害届が以前より出されやすく、警察も捜査する風潮があるという。

「ただ、その後の被害者、加害者、周りの子供へのケアをどうするかまで行き届いていない」(武田氏)

 武司さんは学校の対応をこう嘆いた。

「先生に、警察入ったら、うちの子のことどうケアしようと思ってたん?って聞いたら、何も考えていませんでしたと。腹立ってね」

 文科省は自殺の原因調査の際、指導死という言葉を使っていないため数は不明。一方、武田氏が報道などから事例を調べた結果、小中学生の指導死は未遂を含め過去10年で17件あった。

 自殺の原因究明へ向け、同市教委は近く、第三者を入れた調査委員会を立ち上げる予定だという。

「調査委には、学校・市教委の“お仲間”人事がされることも多い。公平な調査がされるよう遺族が選んだ委員らを入れることも重要です」(武田氏)

 生徒の死の真相が闇に葬られることのないよう、真摯な姿勢で原因解明がされることを切に願っている。

(本誌・上田耕司、平井啓子)

※週刊朝日  2014年5月23日号より抜粋

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