群馬大病院問題 執刀医が報告書に反論
NHKニュース 2015年4月2日 18時06分
群馬大学医学部附属病院で、腹くう鏡の手術を受けた患者8人が手術後に死亡した問題で、全員の診療に過失があったとする病院の最終報告書について、手術を執刀した医師が、患者には手術の前に十分説明を行うなど対応しており、「過失があったという判断には納得できない」などと反論する文書を病院に提出したことが分かりました。これについて、群馬大学は「現時点では調査委員会で適切に調査し、報告書を取りまとめたものだ」とコメントしています。
前橋市にある群馬大学医学部附属病院では、去年6月までの4年間に、40代の男性医師が腹くう鏡を使って肝臓の手術をした患者8人が手術後に死亡し、病院の調査委員会は先月、「すべての事例において過失があった」などとする最終報告書を公表しました。これについて、手術を執刀した医師が「明らかに事実と異なるものがある」として反論する文書を病院と調査委員会に提出したことが分かりました。
この中で、医師はまず、「亡くなられた患者さんはもとより、ご家族の方にもおつらい思いやご心労をおかけして大変申し訳なく思っています」と謝罪しています。
そのうえで、報告書が、手術を行った場合の死亡する確率などのデータを患者に示した記録がないことから、事前の説明が不十分だったと指摘したことについて、医師は、いずれのケースも1時間以上の時間をかけて十分に説明するようにしていたと主張しています。
また、手術前にどの程度肝臓を切除すればいいのか事前の評価が不十分だったと指摘されたことに対しては、事前の評価によって治療方針が大きく変わった可能性は低いとしています。そのうえで、「過失があったという判断には納得できない」と反論し、再検討するよう求めています。
医師は「診療行為に厳しい評価が下されるとしても、公正、公平な調査をしてほしい」と主張しています。
執刀医が提出した反論の文書について群馬大学は取材に対し、「現時点では調査委員会で適切に調査し、報告書を取りまとめたものだ」とコメントしたうえで、個別の内容には答えられないとしています。
患者側弁護士「説明は不十分」
患者側の弁護団で事務局長を務める梶浦明裕弁護士は「遺族は簡単な手術ですぐに退院できると言われ、今、手術をしないと死んでしまうと言われ、疑問を持たずに同意している」と述べたうえで、医師の説明は不十分で遺族は納得していないとしています。
そのうえで、「病院側と医師側で見解が食い違っているという時点で再調査は必須だ。再調査しか選択肢はないと感じる」として病院側は再調査を行うべきだとする考えを改めて示しました。
執刀医師の具体的な反論
群馬大学医学部附属病院で腹くう鏡の手術を受けた患者8人が手術後に死亡した問題で、全員の診療に過失があったとする病院の最終報告書について、手術を執刀した医師は「過失があったという判断には納得できない」などと主張して一人一人の患者について具体的な反論をしています。
このうち肝細胞がんと診断され、手術後66日目に死亡した患者について、報告書では、手術を行った場合の死亡する確率などのデータを患者に示した記録がないことから事前の説明が不十分だったとしています。そして、どの程度肝臓を切除すればいいのか、事前の評価が不十分だったため、必要以上に肝臓を切りすぎた可能性があるとしています。さらに、手術の後も患者には出血などが認められたことから、手術に何らかの問題があった可能性が高いと指摘しています。
これについて、医師は患者には手術の前に1時間以上かけて詳細に説明をするよう努めていたと主張しています。一方、肝臓の切除については切り取る部分が大きいため、術後の経過に影響した可能性が高く、慎重な判断が重要であったと反省しているとしています。しかし、調査委員会が手術のビデオを確認したうえで、原因となる操作は同定できなかったと判断していることに触れ、手術に何らかの問題があったと結論づけるのは根拠が乏しいと主張しています。
胆管細胞がんと診断された患者は、退院から6日目に腹部が膨れて救急外来を受診し、たまった水を出す治療が行われたあと帰宅しましたが、翌日、死亡しました。この患者について、報告書は、救急外来を受診した際には急性腎不全の状態だったため緊急入院させて治療を始めるべきだったとして過失があったと指摘しています。
これについて、医師は緊急入院させ治療すべきだったと認めたうえで、状態の把握と情報の伝達が十分行われず、適切な対応がとられなかったとしています。その一方で、手術後の対応から手術を行った医師らに過失があったと判断されるのは妥当性が低いと考えていると主張しています。