国内最後の“淫行条例” 長野県の検討会案は「深夜連れ回し」にも罰則
産経新聞 2015年9月28日 10時0分配信
増加する子供の性被害の防止に向けて、県民議論の判断材料とするために条例モデルを検討してきた長野県の有識者検討会(座長・安部哲夫独協大法学部教授)は、阿部守一知事に条例モデルを提出した。県は24日に開会した9月定例県議会で条例モデルを提示するほか、県民を対象とした説明会の開催や、当事者となる若者をはじめとした関係団体から意見を聴くことにしている。提出を受けて、阿部知事は「議論を受けて県としてしっかりと方向付けをしなければならない」と語った。
■実態への懸念
本県では47都道府県で唯一、条例によらずに子供を大人による性被害から守る取り組みを行ってきた。しかし、18歳未満へのみだらな性行為を処罰する健全育成条例を制定した東御市で平成24年、教諭2人が条例違反で相次ぎ逮捕される事件があったことから、県として条例制定を検討する動きが始まった。
県は25年5月に有識者や子供たちにかかわる関係者による専門委員会を設置。専門委の議論では、出会い系サイトなど性被害のきっかけがインターネット上にあふれている現状に対する懸念が示された。
また、実際に子供のときに性被害にあった女性が実態を証言したこともあり、事態の深刻さに対する認識は広まった。さらに県警が25〜26年に子供の性被害を把握しながら、児童買春・児童ポルノ禁止法など現行法が適用できず、県に淫行を処罰するための条例がないために摘発できなかった事例が17件20人あったと公表したこともあり、専門委は県民運動や予防教育、被害者支援とともに、淫行処罰に限定した条例が必要だと結論付けた。
その一方で、条例を設ければ自由な恋愛に公権力が介入して捜査の対象となるとした「警察性悪説」に立つ反対論や、条例によらずに県民運動で青少年健全育成を推進してきた歴史に固執する意見も根強く、議論は深まらないまま、子供たちが性被害の危険にさらされ続ける状況が続いてきた。
■活発な議論期待
有識者検討会が今年2月からの議論を基にまとめた条例モデルは、子供を狙う大人の性の暴走を法規制する姿勢を明確に打ち出す一方、啓発活動や教育など予防に対する取り組みや性被害を受けた子供に対する支援などを規定する内容となっている。罰則は、大人による威迫や欺きなどによる子供への性行為・わいせつな行為と、保護者の同意などがなく深夜に子供を連れ回す行為に対してのみ適用する。
深夜外出の制限については、保護者の委託・同意を得ずに正当な理由がないまま深夜に子供を連れ出し、意に反してとどめることを禁じ、違反者に対して30万円以下の罰金を科す罰則を設けた。規制する深夜は午後11時から翌日午前4時までとし、保護者は子供をこの時間帯に外出させず、深夜外出している子供を見かけた場合は帰宅を促すなどの県民の努力規定を設けた。
安部座長は条例モデルの提出にあたり、「他県の青少年健全育成条例にあるような枠組みではなく、より明確な形で概念を整理して、(委員全員が)法律の専門家として精査し、具体的な問題の整理をして作成した」と強調した。
これを受け、阿部知事は県内の条例制定をめぐる議論の状況について、「他県の条例を念頭に置いた理念的な賛成、反対の議論になっている」と指摘。そのうえで、「本当に今の子供たちの状況を見たときに、どういうことが必要で、どういうことが必要ではないのか、県民と冷静に対話をして方向付けをしなければいけない」と述べ、モデルを土台にした論理的な議論が行われることに期待を表明した。