<森友学園>籠池夫妻を追起訴 大阪府・市の補助金詐取など

<森友学園>籠池夫妻を追起訴 大阪府・市の補助金詐取など
毎日新聞 2017/9/11(月) 20:49配信

 大阪地検特捜部は11日、学校法人「森友学園」の前理事長、籠池泰典(64)と妻諄子(60)の両容疑者を、大阪府と大阪市の補助金をだまし取るなどしたとして詐欺と詐欺未遂の罪で追起訴した。既に起訴した国の補助金詐取や未遂分も含めた立件総額は約2億150万円に上り、補助金不正の捜査は終結した。一方、財務省近畿財務局の職員らが国有地を不当に安く売却した背任容疑や、学園との交渉記録を廃棄した証拠隠滅容疑での捜査は継続する。

 起訴内容は、両被告が2011〜16年度、学園が運営する塚本幼稚園(大阪市)の障害児数などに応じた府と市の補助金約1億200万円を詐取し、16年度にはさらに約2500万円を詐取しようとしたとされる。また、系列の開成幼稚園(同、休園中)でも11〜13年度、府の補助金約1900万円をだまし取ったとされる。関係者によると、両被告は黙秘を続けている。

 学園が小学校用地とした大阪府豊中市の国有地を巡っては、財務局が昨年6月、鑑定額からごみ撤去費として約8億円を引いて学園に売却。地元市議や弁護士らが背任容疑で告発した。

 特捜部は財務局職員らを任意で聴取しているが、立件は困難との見方が強い。背任罪の成立には、職員らが自己や学園の利益を図り、国に損害を与える「図利加害目的」が必要。弁護士らは、安倍晋三首相の妻昭恵氏が小学校の名誉校長だったため、職員らが人事権を持つ官邸を意識し、保身のために学園の意向に沿ったとの構図を描く。

 しかし、内部資料からは学園側が昭恵氏の存在よりむしろ、ごみや汚染を盾に値引きを迫る様子が浮かぶ。交渉が長引けば開校が遅れ、訴訟リスクを高める。新たなごみが見つかる可能性もあり、最大限の減額で決着させた−−。職員らはそう説明している模様だ。

 検察幹部は「国に損害を与える認識が職員にあったのか。内心の問題だけに立証は難しい」と話す。

 ただ、ごみの量の算定や価格決定の過程には不透明な点も多い。会計検査院も経緯を調べており、特捜部は時機を見極めながら起訴か不起訴かの最終判断をする見通しで、長期化も予想される。【三上健太郎、岡村崇】

—–

<森友学園>執拗に値引き要求 籠池夫妻追起訴
毎日新聞 2017/9/11(月) 22:20配信

 学校法人「森友学園」への国有地売却に端を発した事件は11日、前理事長の籠池泰典(64)、妻諄子(60)の両被告が詐欺罪などで追起訴され、補助金詐欺に関する捜査は終結した。今後は国側が不当に安く売却したとする背任容疑での捜査に重点が移る。8億円の値引きに、役人のそんたくはあったのか。両被告の執拗(しつよう)な交渉の結果なのか。最大の疑問に答えは出ていない。【三上健太郎、岡村崇】

 ◇財務省「厚遇」説明なく

 「ゼロ円に近い形で払い下げしてほしい。グーンと下げていかなあかんよ」。迫る籠池被告に、財務省近畿財務局の担当者が応じた。「1億3000万円を下回る金額はご提示できません。それに近い金額まで極力やる」

 昨年5月18日の録音とみられ、著述家の菅野完氏が公開した音声データには、学園が小学校用地に選んだ国有地(大阪府豊中市)の売買を巡る、籠池夫妻と財務局の会話が残されていた。交渉は最終局面に入っていた。

 安値で買い取りたい夫妻は、根拠を示さないまま、突然、土地がダイオキシンに汚染されていると言い出す。値引きを迫り、おえつを漏らし、「鬼」と暴言を浴びせた。

 だが、財務局の担当者は荒れた交渉を打ち切らず、むしろまとめようとした。国は2015年に学園が実施した地中の廃棄物や汚染の除去費用として、1億3000万円を支出済み。それを下回る額では売却できない−−。そう伝えていた。

 国有地の評価額はその後、9億5600万円と鑑定され、校舎建設着工後の昨年3月に新たに見つかったとされるごみの除去費約8億円を引いた売却額は、担当者が示した1億3000万円に極めて近い、1億3400万円になった。8億円の算定は、ごみが最深9・9メートルまであると推定された結果だが、現認されておらず、専門家は疑問視している。

 学園は当初の借地契約でも国から有利な条件を引き出してきた。15年5月、国有地の借地契約を結ぶが、不動産鑑定士が査定した当初の賃料は年約4200万円だった。しかし、学園が軟弱地盤を示す資料を国に提示すると、学園の希望に近い2730万円に下がった。学園の内部資料によると、契約までに籠池被告は財務局担当者の発言を「信ぴょう性を欠く」と非難する内容証明郵便を送りつけ、徹底的に攻めた。

 学園の強硬な交渉の背後には、安倍晋三首相の妻昭恵氏の影がちらつく。小学校計画で、名誉校長に名を連ねた昭恵氏。籠池被告は交渉内容を繰り返し報告していた、と証言している。ただ、財務省は「誰が名誉校長でも関係ない」と、学園への配慮を否定する。

 昨年6月、交渉は妥結したが、財務局は代金の分割払いまで認めた。異例とも言える厚遇の背景には、どのような意思決定があったのか。国会審議で野党側は交渉記録の開示を求めたが、分割払いの頭金を受け取っただけだった財務省は「事案が終了し、記録は廃棄した」として、詳しい説明を避けたままだ。

 価格を事実上示しての交渉も、佐川宣寿・財務省理財局長(当時)が今年3月の国会審議で「事前に、先方側に価格をお知らせすることはない」と答弁した内容と食い違う。昭恵氏も公の場では一切説明していない。

 背任容疑で財務局職員らを告発した木村真・豊中市議は「いびつな取引だったことがはっきりしてきた。特捜部は強制捜査に乗り出し、明らかにしてほしい」と話す。

 ◇黙秘続ける

 籠池泰典被告と妻の諄子被告は7月31日の逮捕以降、大阪拘置所(大阪市都島区)に勾留され、ほぼ連日取り調べを受けている。関係者によると、雑談には応じるものの、容疑については黙秘し、供述調書はまだ1通も作られていない。

 両被告には刑事弁護を得意とする大阪の弁護士が付いた。弁護人以外との接見は裁判所から禁止されている。籠池被告は任意聴取時にも持参していた「被疑者ノート」に取り調べ内容を記録しているとみられ、諄子被告は元気な様子で、差し入れの本を読んでいるという。

 両被告の長男はフェイスブックで「黙秘権は全国民に与えられた権利。(両親は)話すべきことは話している」と記している。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする