<教育委員会>教員の「性暴力」 実効性ある対策遠く苦慮
毎日新聞 2018/1/26(金) 10:16配信
京都地裁(御山真理子裁判官)は25日、に対し、懲役9年(求刑・同10年)を言い渡した。子供にとって安心できるはずの学校で、「魂の殺人」とも言われる性暴力はなぜ繰り返されたのか。事件発覚後、京都府教委は、所管する全校で研修を実施するなど再発防止に取り組むが、実効性の高い対策は見いだせていないのが実情だ。【飼手勇介】
判決によると、被告は小学校の屋上やトイレなどで、女児7人の服を脱がせて動画撮影をしたり、下半身を触ったりした。判決は女児に口止めしたり、嫌がられると別の女児を狙ったりと約2年2カ月で9件もの犯行を重ねたことを挙げ、「刑事責任は重い」と厳しく非難した。
一方、被告は公判の中で、「講師として働く前から自分が小児性愛者だと認識していた。教育実習などで子どもと関わる中で気付いた」と説明。検察官がわいせつ行為が目的で教師になったのかとただすと、しばらく沈黙した後、「全く無かったとは言い切れないが、犯罪になるのでしないでいられると思った」と語った。また犯行について、「当時は(被害女児の)深いトラウマになるようなことはしていないと、都合良く考えていた」とも述べた。
文部科学省によると、昨年度に「わいせつ行為・セクハラ」で懲戒処分された全国の公立学校の教職員は226人と2年連続で過去最多を更新。府内でも昨年度、府教委が懲戒処分とした教員が8人と前年度の2人から急増し、「異常事態」(府教委)となっている。
7人の女児が被害に遭った今回の事件を受け、府教委は「セクシュアル・ハラスメント等の根絶に向けて」と題した冊子を作成。所管する府内の全ての公立小中高校で研修を実施した。
この中では気を付けるべき点として、児童との距離が近すぎるなど気付いた点があれば、教員間で声をかけあう▽密室で児童と2人だけになる状況を避け、複数の職員で指導する−−などを列挙。府教委の担当者は、「採用面接で完全にシャットアウトすることは難しい。周囲の監視の目を強めて、わいせつ行為が『できない』環境を作っていくしかない」と苦しい胸の内を語る。
こうした中、さらに踏み込んだ対策に乗り出したのが長野県教委だ。相次ぐわいせつ事案への対策の一環として昨年11月、精神科医と協力して小児性愛の有無を調べる「自己分析支援チェックシート」を作成。県内の公立小中高校の教員など約1万8000人全てに回答させた。あくまで教員が自身について把握するのが目的のため回収はしていないが、専門医の連絡先を明記。該当する項目があれば、自身で受診するよう促している。
一方、長野県教委は、教員を目指す学生の規範意識を高める取り組みも昨年12月から開始。これまでに信州大と松本大の教育学部の学生らを対象に、懲戒処分の具体事例を基に注意点などについて講義した。県教委の担当者は「個人の内面に深く関わるため対策が難しいが、複数の対策を組み合わせて教員の性犯罪を根絶したい」と話している。