早大セクハラ”教員32人が共同声明”の意味

早大セクハラ”教員32人が共同声明”の意味
プレジデントオンライン 2018/7/25(水) 15:15配信

早稲田大学文学学術院の現代文芸コースに通っていた元大学院生の女性が、渡部直己教授からハラスメントを受けた問題で、新たな動きがあった。早大の教授などで構成された有志が、事実究明や再発防止を求める声明を発表し、賛同者を募っている。7月24日現在で32人の教員が賛同しており、人数はさらに増えそうだ。早大はどう対応するのか。早大のセクハラ疑惑、第4弾をお届けする――。

■8月6日まで早稲田大学の関係者に限って署名を募集

 声明は7月23日に「早稲田大学で教育・研究に携わる有志」がブログで発表した。呼びかけ人は文学学術院の岡部耕典教授や豊田真穂教授など7人。8月6日まで(※)専任教員・非常勤講師・研究員など早稲田大学の関係者に限って署名を募っており、7月24日現在で文学学術院の石岡良治准教授やチェン・ドミニク准教授など25人が賛同している。合計ですでに32人の教員が名を連ねていることになる。

 ※初出時、「8月8日まで」としていましたが、「8月6日まで」の誤りでした。訂正します。(7月25日23時追記)

 声明文では、冒頭で「ハラスメントの申し立てに対し大学側が適切な対応をせず、被害女性、そして相談を受けた女性教員を追いつめたとする報道の指摘については、一同強い衝撃を受けております」と説明。その上で「この事実に真摯に向き合い、二度とこのような事態を引き起こさないために」と、以下の4点を早大に対して求めた。

・関係者の保護がなされた上での事実究明
・被害者の意志を尊重した被害回復
・セクハラ再発防止の具体的な行動計画の策定と遂行
・学生全般の不安解消のための取り組み

■「教授らによる声明文は心強い」

 プレジデントオンラインは、賛同署名をブログで募ることになった経緯について、呼びかけ人の一人である岡部耕典教授に聞いたところ、「一連の報道には敬意を払っているが、今後の対応については他の人と話し合いをするため、コメントは控える」との回答だった。

 ハラスメントの被害にあった元大学院生の女性は「教授らによる声明文は心強いです。学内からこのような動きが出たことをとてもうれしく思います。本当にありがたく感じます」とコメントしている。

 また女性は渡部教授から、報道後、弁護士を通じて「謝罪をしたい」との申し入れがあったことを明らかにした。

 女性側は6月27日付けで「渡部教授は『過度な求愛』などとという言葉で事実関係を曖昧にしようとしており、一時の感情表現の誤りというレベルの問題として捉えているようだが、こちらは優位的地位、継続的関係を利用した悪質なセクハラ行為と認識している。事実関係を曖昧にしたたままの謝罪では意味がない。また、ほかにも被害があった学生がいたと聞いている。そもそも、教育者としてのモラルや資質が根本的に問われる事態であり、責任は個人に対する謝罪で済む問題ではない。こうした点について、真摯に受け止め、お答えいただけることが、協議の前提と考えている」といった旨を書面で伝えた。その後、渡部氏からの連絡はないという。

■早大は渡部教授の辞表は受理していない

 早大広報課は教員有志からの要望に対して、「このたび、深刻なハラスメント行為が発生したことは遺憾であり、本件に関し直接ご迷惑をおかけした申立人およびその関係者はもちろん、授業などにおいて少なからず影響を受けた学生の皆様に深くお詫び申し上げます。本学といたしましてはこの事案を真摯に受け止め、ハラスメントに関する啓発活動をさらに徹底するとともに、再発防止に向けた取り組みを一層強化してまいります」とコメントした。

 また渡部直己教授らによるハラスメント問題の調査結果については「具体的な日時については回答を差し控えさせていただきますが、調査終了後できる限り迅速に公表する予定です」としている。

 早大関係者によると、早大の調査委員会は渡部教授のハラスメント行為を認定し、懲戒処分を科す方向で、発表日時を調整している。このため渡部教授の辞表を受理していないという。

 ▼セクシュアル・ハラスメント報道に関する早稲田大学で教育・研究に携わる有志の声明

 ※ブログ(http://waseda2018seimei.blogspot.com/)より全文を紹介する。

 先日来、早稲田大学におけるセクシュアル・ハラスメントに関連して多数の報道がなされています。本件については現在、大学が調査委員会を設置し調査中であり、私たち早稲田大学で教育・研究に携わる有志も、大学発表以上の事実は把握しておりません。しかし、ハラスメントの申し立てに対し大学側が適切な対応をせず、被害女性、そして相談を受けた女性教員を追いつめたとする報道の指摘については、一同強い衝撃を受けております。

 大学はこれまでにも、「早稲田大学におけるハラスメント防止に関するガイドライン」を策定し、教職員への研修等を通して必要な対策を講じてきたはずでした。しかしながら、ハラスメントの申し立てをしなければならないところにまで学生を追いつめ、さらに、その申し立てに対して大学が適切な対応を取ることができなかったと指摘されていることを考えると、これまでの対策は不十分であったと認めざるを得ません。この事実に真摯に向き合い、二度とこのような事態を引き起こさないために、私たちは早稲田大学に対して以下のことを要望します。同時に私たち自身も、自らが果たすべき役割を今いちど厳しく反省し、それぞれの立場の違いを乗り越え、ハラスメントのない環境の実現と維持に共に取り組みます。

 ・関係者の保護がなされた上での事実究明

 今回の報道に関して、憶測や噂によって誰かが不利益を被ることがあってはなりません。正確で迅速な事実究明を要求します。また、多大な勇気をもって被害の声をあげた方々が、制度上・人間関係上の不利な扱いを受けることがないよう、強く要望いたします。

 ・被害者の意志を尊重した被害回復

 今後調査委員会の調査の中で、被害事実が明らかになり、確定した場合、被害女性の現在の意志を尊重した上で、被害回復の措置が取られるよう要望いたします。ご本人が希望された場合は、安心できる環境で速やかに復学できるための措置を講じるよう要請します。

 ・セクハラ再発防止の具体的な行動計画の策定と遂行

 セクハラ再発防止についての具体策を大学が策定し、実施することで、本学に関わるすべての人々が、安心して学び、働くことのできる環境を整備するよう要求します。同時に、私たちも大学および関係各箇所と連携をとりつつ、各種の啓発活動、教員同士の相互学習などの具体的な対策を通じて、ハラスメントのない学習・研究・労働環境を作ることに努めます。

 ・学生全般の不安解消のための取り組み

 今回の報道に接し、不安な思いを抱いている多くの学生に向けて、大学がハラスメントに対して厳正な態度をとり、被害者保護の姿勢に徹するという宣言を、改めて発するよう要望します。今回の調査の結果に基づき、一般の学生に対しても、十分なケアと制度上必要な措置が取られるように願います。

 以上

2018.7.23公開

 早稲田大学で教育・研究に携わる有志

 呼びかけ人
熱田敬子(文学学術院 講師(任期付))
飯野由里子(文学学術院 非常勤講師)
岡部耕典(文学学術院 教授)
豊田真穂(文学学術院 教授)
橋本一径(文学学術院 教授)
森山至貴(文学学術院 講師)
由尾瞳(文学学術院 准教授)

 賛同人(先着順)
Chigusa Kimura-Steven, Ph.D.(ジェンダー研究所 招聘研究員)
ピタルク・パウ(文学学術院 准教授)
阿比留久美(文学学術院 准教授)
高井詩穂(文学学術院 専任講師)
石岡良治(文学学術院 准教授)
チェン・ドミニク(文学学術院 准教授)
内田雅克(文学学術院 兼任講師)
松村悠子(文学学術院 非常勤講師)
森 達也(政治経済学術院 講師(任期付))
久保 豊(演劇博物館 助教)
中沢忠之(理工学術院 非常勤講師)
高柳聡子(文学学術院 非常勤講師)
川口晴美(教育・総合科学学術院 非常勤講師)
近藤牧子(文学学術院 非常勤講師)
中島万紀子(文学学術院 非常勤講師)
片山幹生(文学学術院 非常勤講師)
西尾宇広(文学学術院 非常勤講師)
鷲谷 花(文学学術院 非常勤講師)
向後恵里子(文学学術院 非常勤講師)
北村紗衣(エクステンションセンター 非常勤講師)
森岡正博(人間科学学術院 教授)

他4名(2018.7.24時点)

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