性的虐待事件など被告匿名の公判増加 徳島地裁4件
徳島新聞 2018/8/17(金) 12:30配信
性的虐待事件などの刑事裁判で、被告を匿名にして審理する公判が、徳島地裁を含めた各地の裁判所で広がりつつある。被害者の特定を避け、保護するのが目的。専門家は秘匿の必要性を認めつつ、憲法で定める「裁判公開の原則」から慎重な運用が必要としている。
徳島新聞が全国50地裁に取材したところ、被告を法廷で匿名にして公開しなかった事件が過去にあったと答えたのは、徳島地裁を含め大阪、神戸、高松など8地裁。残り42地裁は「統計がなく回答できない」としたが、実際は実施している地裁も少なくないとみられる。
徳島地裁では2016年、被告の男が同居する子どもに被害を負わせた傷害事件で実施。17年はゼロ件だったとみられるが、18年は既に3件に上っている。7月10日に初公判が開かれた県内初の監護者わいせつ事件では、人定質問を口頭で行わずに被告に起訴状を見せて確認したほか、開廷表の被告名を「甲」と記載するなどした。
大阪地裁は「被告と被害者が血縁関係を有する場合など、被告の氏名を明らかにすることで被害者が特定される事件」、神戸地裁は「被告と被害者の姓が同一である性犯罪など」で適用したことがあるとした。
07年の刑事訴訟法改正で、法廷での被害者特定事項の秘匿が可能になった。一般的には被害者側のみ秘匿されるが、被告名が分かれば被害者の特定につながるとの判断から、被告の氏名や住所も秘匿対象にするケースが出ている。児童虐待や、教師が教え子に性的被害を負わせた事件などで適用されることが多い。
裁判所によって判断が分かれる事例も。では、11年に佐賀地裁が被告名を伏せたのに対して、
九州大法科大学院の田淵浩二教授(刑事訴訟法)は「児童虐待などは、被害者側が公になることを恐れて事件にならないケースも多い。被害者特定事項の秘匿で2次被害を防ぐ配慮をし、きちんと刑事責任を追及できるようにするのは意味がある」と指摘する。その上で、裁判公開の原則や国民の知る権利を踏まえ「秘匿する範囲を広げ過ぎず、厳格に運用する必要がある」と話した。