松山大女子駅伝部 パワハラ訴え 体重調整であつれきか 軽量化戦略 陸上界浸透 専門家、過度の減量警鐘

松山大女子駅伝部 パワハラ訴え 体重調整であつれきか 軽量化戦略 陸上界浸透 専門家、過度の減量警鐘
愛媛新聞ONLINE 2020/3/7(土) 9:41配信

 松山大女子駅伝部の複数の女子部員が昨年11月、監督からどう喝などのパワハラを受けていると大学に申し立てた問題。背景として浮かび上がるのが、部員と指導者との間の体重調整を巡るあつれきだ。陸上の長距離種目の指導方法で選手の軽量化が浸透する中、食事制限を伴う過度の減量は、女子アスリートの心身への悪影響が大きいと専門家は警鐘を鳴らす。

 当時監督を務めていた男性准教授(50)は、前任校でコーチとして大学日本一を経験。松山大着任後、2008年創部の女子駅伝部を率い、16年に全日本大学女子駅伝で初優勝に導いた。女子3000メートル障害でも全国優勝の選手を育成し、地方大学を短期間で全国レベルに成長させた手腕を評価する向きは多い。
 一方、申し立てなどによると、男性准教授は選手の体重管理を徹底し、大会前などは厳しい食事制限を課していたという。部員側は、体重が増えると怒られる恐怖感から、虚偽の体重を申告せざるを得ない精神状態に追い詰められていると主張。輝かしい実績の裏で多くの部員が退部や休部に追い込まれていると訴えている。
 スポーツトレーニングが専門の大阪学院大経済学部の山内武教授によると、軽量化は近年、高校生らの指導でも広まっている。好記録を出すには有効だが、若年層の女性の場合、過度な減量で運動性無月経による骨粗しょう症などの危険性が高まるという。食事制限は摂食障害につながる恐れもあり「副作用が強すぎる劇薬。教育機関で行うのは望ましくない」と警告する。
 男性准教授は取材に対し「大会に向けた目標体重を個々に設定していたが、過度の減量を強いるなど不適切な指導はしていない」と反論する。ただ、複数の関係者の話を総合すると、大会前には体脂肪率が1桁台となる部員が複数存在し、周囲から危険性を危惧する声も上がっていたという。遅くとも1年ほど前から部員らは指導に不信感を募らせており、大学のハラスメント防止委員会に申し立て、一気に噴出した格好となった。
 申し立てに至るまでに亀裂を埋める手だてはなかったのか―。松山大の別の運動部で監督経験がある男性は、各運動部で問題が生じた際に大学当局が関与せず、部内での解決が原則だったと振り返る。「大学かクラブか、責任の所在がはっきりしない。問題発生時の対処法やルールを明確にするなど大学として解決する姿勢を示さないと、安心して指導に当たれない」
 部の責任者として大学教員らが部長を務めるのが通例だが、学生スポーツの在り方などを研究する一橋大経営管理研究科の岡本純也准教授は「普段の業務を行いながらクラブをみる負担を考えれば、大学当局も部長に積極的な介入を促しにくい」と指摘する。
 特に大学の広告塔となる強豪クラブの指導者に対しては、大学側の関与が一層難しくなるとみる岡本准教授。運動部の学生は指導者や先輩を否定する相談をしづらく、大学の窓口を活用しないまま問題が深刻化する傾向も挙げる。
 松山大ハラスメント防止委員会は現在、調査委員会を設けて事実解明を進めている。日本一にも輝いた名門校で表面化した今回の問題。運動部活動に対する大学のガバナンス(組織統治)の在り方も問われている。

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