「著名な研究者という権威に逆らえず」 京大特別教授「金看板」が研究費不正5億円

「著名な研究者という権威に逆らえず」 京大特別教授「金看板」が研究費不正5億円
京都新聞 2020/6/27(土) 15:00配信

 多くの世界的発見を成し遂げてきた京都大の霊長類研究に影を落とす疑惑が明確になった。京大特別教授で、霊長類研究所(愛知県犬山市)元所長の松沢哲郎氏(69)らが不正経理を行っていたとされる問題。京大は26日に記者会見を開き、研究担当の理事や同研究所の現所長らが調査結果を公表した。京大に4人しかいない特別教授の関与が疑われる不祥事に、関係者は一様に厳しい表情を浮かべた。

 「このような不正経理が行われていたことは誠に遺憾。関係者と国民に深くおわび申し上げる」

 午後3時に始まった会見で、湊長博理事や湯本貴和所長らが冒頭に頭を下げ、陳謝した。湊理事は記者らに配布した8ページの資料を基に、松沢氏らが関与したと認定した過大な支出や架空取引を説明し「自分の研究を進めることは大事だが、それは不正の言い訳にはならない」と厳しく批判した。

 京大の霊長類研究の歩みは「今西進化論」で知られる文化勲章受章者、故・今西錦司氏が宮崎県・幸島でニホンザルの調査に乗り出した1948年にさかのぼる。湊理事は「京大の霊長類研究は古い歴史を持ち、京大にとって非常に重要な研究領域であり続けている」とする一方、同研究所の今後は「どのような組織体制でやるか、改善するかは全学的議論の上で決定する」と述べた。

 松沢氏は特別教授といういわば京大の「金看板」。他にノーベル医学生理学賞受賞者の本庶佑(ほんじょたすく)氏、「数学のノーベル賞」と呼ばれるフィールズ賞を受賞した森重文氏らが名を連ねる。調査結果は、事務職員が松沢氏らに強く意見を言えない状況にあり、会計上の問題に気付いても是正できるような関係になかった点に言及した。「所長だった立場と著名な研究者という権威の中で物が言いづらかったのか」という記者の問いに、湯本所長は「それは否定できない」と言葉を振り絞った。

 だが「松沢氏は(同研究所の助手を務めたことがある)山極寿一総長と密接な関係にある。この点が調査に与えた影響は」と質問された時は「一緒に勤務したこともあるが、それ以上でもそれ以下でもない。密接な関係にあったとは考えていない」と語気を強めた。

 会見場は、本庶氏をはじめ京大関係者からノーベル賞受賞者が出た際の会見に使われてきたホールだが、一転、謝罪の場に。40人近い記者とカメラマンが詰め掛け、関心の高さをうかがわせた。

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