教員のわいせつ対策 犯罪心理専門家がチェック表

教員のわいせつ対策 犯罪心理専門家がチェック表
産経新聞 2020/9/24(木) 11:07配信

 児童生徒に対してわいせつ行為を行ったとして処分される教員が増え続けている現状を変えようと、教員が自らの性的嗜好(しこう)を把握して自制できるようにする「教員の性行動セルフチェック表」を犯罪心理の専門家らが作成した。中心となる奈良大の今井由樹子准教授(司法・犯罪心理学)は「チェック表が子供を守るために役立てば」と期待しており、年内に論文をまとめ、各地の教育委員会などでの採用を目指す。(木ノ下めぐみ)

 ■処分教員は過去最多

 文部科学省が平成30年度に実施した調査によると、わいせつや性的言動で処分された教員は過去最多の282人。被害者の約半数は加害教員が勤務する学校の児童生徒や卒業生で、学校内で被害が発生したケースも多かった。

 今井准教授はこれまでに加害者となった元教員への聞き取りを実施。「生徒は教員である自分を慕っているのだから、わいせつ行為を嫌がっていないはずだ」といった思考の誤りが多くみられたという。

 こうした現状を受け、今井准教授らは29年、中部地方2県の公立小中高校と特別支援学校の教員計875人にアンケートを実施。回答結果を分析し、学校での具体的な場面を想定したチェック表を作成した。

 「性加害者がどのように問題行動に走るのかという犯罪心理学の観点を盛り込んだ」と今井准教授。チェック表の質問項目は「職場に溶け込めないと感じる」「性的誘いをはっきり断らないのはイエスを意味する」「特定の児童生徒との個別相談・指導が複数回、長時間に及ぶことがある」など34項目を設定。「よく当てはまる(3点)」から「まったく当てはまらない(0点)」で回答する。

 項目は、対人関係における思い込み(思考の誤り)▽子供との距離感▽職場での人間関係−といった分野ごとに数値を集計。標準偏差値から逸脱している度合いで性加害への危険度を自ら把握し、気になる数値が出れば、心理士や精神科医などの専門家に相談するよう勧める。他人に見られることを意識すると正確な回答ができなくなる可能性があるとして、自己採点方式で行うよう求めている。

 今井准教授によると、過去に加害者となった教員の中には職場で信頼が厚く「まさかこの先生が」と思われる人もいたという。「チェック表で自身の傾向を知り、時には他者の支援を得て、被害者を出さないように予防してほしい」と話す。

 ■国や自治体も対策

 教員によるわいせつ行為が後を絶たない要因の一つとして、過去の処分情報が共有されにくい問題が指摘されている。このため文部科学省は今月、これまで3年だった懲戒処分歴のデータベースの検索期間を40年に延長することを発表した。処分歴を隠して別の地域で採用されることを防ぐための対策だ。

 文科省はわいせつ行為が認定された教員を懲戒免職とするよう教育委員会などに要請しており、懲戒免職や禁錮以上の刑が確定すれば教員免許は失効となる。

 ただ、現行の教員免許法では3年経過すれば再取得が可能。懲戒処分となった教員のデータは各都道府県教委で検索可能だが、これまで直近3年間に限られており、同じ教員がわいせつ行為を繰り返したケースもあった。

 文科省は検索期間延長の第1段階として、11月に5年分を閲覧できるよう変更し、来年2月から40年分の確認が可能になる。

 教員のわいせつ問題では各自治体も対策に取り組んでいる。わいせつ行為による教員処分数が全国ワースト級の大阪府は今年、公立学校教員採用選考の願書に過去の懲戒処分歴の記載欄を新たに設けた。本人が出願を思いとどまることを期待したものだ。ただ完全に遮断することは難しく、府教委関係者は「国全体で取り組むべき問題だ」と話している。

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