責任は学校、それとも委託先? 奈良県立高サッカー部飲酒問題

責任は学校、それとも委託先? 奈良県立高サッカー部飲酒問題
産経新聞 2020/12/21(月) 19:57配信

 31日に開幕する全国高校サッカー選手権大会に出場するのサッカー部員が寮で飲酒していた問題で、学校と同部の運営を委託されていた民間のサッカークラブとの連携不足が浮き彫りとなっている。背景には生徒指導をめぐる責任の所在のあいまいさがあり、学校側は部員の飲酒情報を得ながら約2カ月間も放置し、対応は後手に回った。事態を重くみた県教委は今年度中に提携内容を見直す方針。

 「本来なら情報を得た段階ですぐ飲酒への対応をしなければならなかった。学校の甘さがあり、大人がきちんと指導できなかった」

 今月17日、飲酒問題をめぐる対応の不備について県教委の吉田育弘教育長は会見でこう語った。

 同校は平成29年に奈良市の食品会社が経営する民間の「ボスコヴィラサッカーアカデミー」と提携。アカデミーが部の運営や指導を担うことになった。部員はアカデミーの寮で生活しながら、同校に通学。公立校ながら民間クラブが部の運営を行う全国でも珍しい取り組みで、全国大会出場を決めるなど躍進を遂げた。

 こうした矢先に飲酒問題が起こった。

 県教委や学校側の説明によると、今年8、9月の計2回、2年生部員10人が寮で酎ハイなどを飲酒。アカデミーは9月30日に飲酒の疑いを把握し、10月7日に学校側に報告したが、学校側が部員らに聞き取りなどの本格調査をしたのは、今月初旬に県教委と同校に飲酒の様子を撮影した写真の画像データが届いてからだった。

 ■責任あいまいに

 2カ月間調査をしなかった理由について、吉岡敏之校長は「寮内で起きたことは、アカデミーに指導を任せていた。認識が甘かった」と謝罪。アカデミー側は「学校側に報告した時点で(飲酒問題は)終わっていると思った」と釈明した。

 両者が交わした提携内容を定めた基本合意書には、部での練習や寮での事故などはアカデミーの指導・管理下にあると明記しているが、「生徒指導上の問題が生じた場合」は「責任の所在の検討を行う」などと記されているのみであいまいだった。

 県教委は「学校の指導・監督が不十分だった」と指摘。アカデミー側の生徒指導能力には限界があるとして今年度内に、県教委を含む3者で、学校側の指導や責任の度合いを強める方向で合意書を見直すとしている。近く教員1人を寮に派遣し、部員の生活指導にあたる予定だ。

■専門家「学校も状況把握を」

 教員が週末などに部活動に関わる時間が増え、負担増につながることから、公立校では外部のコーチが指導したり、部自体を地域や民間団体に委託したりする動きが進む。専門家は学校側が委託先任せにしないよう警鐘を鳴らす。

 文部科学省は平成29年度から中学、高校の部活動で外部人材が指導・引率ができる「部活動指導員」を制度化。今年9月には、休日の部活動を地域や民間団体に委託できるよう整備を進める改革方針もまとめた。

 しかし、体育会系の部活動で外部コーチによる体罰が発覚するなど、学校側の「目」が行き届かないことによる弊害も指摘される。

 部活動のあり方に詳しい教育研究家の妹尾昌俊さんは、外部委託について「教員の負担軽減が図られ、子供たちは専門的な技量や指導力のある人から教わることができ、技術力向上を望める」とメリットを指摘する。一方で「何か問題やトラブルがあった際、適切に対応できるよう教育委員会や学校は委託先任せにせず、トラブルの未然防止に向けた研修や、定期的な観察、状況把握を行うことが大切だ」としている。

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