体罰「もっと多い」、被害訴える少年や専門家/神奈川

体罰「もっと多い」、被害訴える少年や専門家/神奈川
カナロコ by 神奈川新聞 2013年6月8日(土)13時0分配信

 大阪市立桜宮高校での生徒自殺を受け、初めて全国的に実施された体罰実態調査。県教育委員会は教員への体罰防止研修などで再発防止を目指すが、体罰の被害を訴える少年や運動部での指導経験者は、調査内容や被害対応の不十分さを指摘する。

 「調査に出ていない被害は多いと思う」。相模原市在住で元バレーボール部員の少年(16)は話す。昨年4月、県内の私立高校にスポーツ推薦で入学した少年は、プレーの未熟さを理由にバレーボール部顧問から殴られ続けたという。運動部では「昔はもっと厳しかった」という雰囲気や、スポーツ推薦で入学した立場などから、保護者も生徒も体罰の被害については沈黙しがちだ。しかし少年は「アンケートはどんどんやってほしい。無記名にして、絶対に学校側に見られないようにすれば、アンケートに答える生徒は増える」と訴えた。

 少年はことし5月に高校を退学したが、今も悔しさは消えない。同市教育委員会や県の私学振興課に被害を訴えても、「私学だから対応できない」と言われるだけだった。「このままでは、他の人もあの学校に入れば自分と同じことになる」。現在の教育制度では、私学に対して指導ができる仕組みがないことにも疑問を投げかける。

 日本体育大学評議員の鈴木洋祐氏は、アンケートにどこまで実態が反映されているか疑問視する。「態度の良くない生徒をファイルでたたくような事案は出しても、本当に深刻な例は伏せているのではないか」

 同時に、「調査は教員の意識を高める点で大いに意義がある」と評価する。日本の学校の運動部の問題点として、指導が複数のコーチの分担ではなく顧問一人にかかっていることを挙げ、「調査は顧問が思い入れだけで突っ走るような事態の抑止にもなる。第2弾、第3弾の調査をやってほしい」と期待した。

 県教委は「体育館や運動場を『密室』にしないことが重要」とし、指導する側、される側両方の意識を変えるための取り組みに着手する。体罰根絶ガイドライン作成や被害相談窓口の設置など、新たに五つの対策を7月から順次行うほか、PTAの会合などに出向き、運動部だからと体罰を容認しないよう保護者に訴える考えだ。

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