阪大と国循が臨床研究中止へ 肺がん治療関連の論文不正、新たに2本発表

阪大と国循が臨床研究中止へ 肺がん治療関連の論文不正、新たに2本発表
毎日新聞 2021/1/30(土) 13:22配信

 大阪大と国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)に在籍していた男性医師による論文5本で不正が認定された問題で、国循の調査委員会は30日、新たに2本の論文で捏造(ねつぞう)や改ざんがあったと発表した。うち1本は心臓病の治療薬を肺がんに活用する先進医療として臨床研究を行う根拠となっており、阪大病院はこの臨床研究の中止を決めた。根拠となる論文の不正で臨床研究が中止されるのは異例。

 国循によると、阪大病院の元医員で国循の元室長の野尻崇医師が筆頭著者として2015、17年にそれぞれ発表した論文2本で、故意などによる「特定不正」が計8カ所認められた。15年の論文は、心不全の治療薬に肺がんの再発や転移を防ぐ効果があるとするもので、臨床研究実施の根拠となっていたが、薬投与後の実験データに都合の良い値を手入力するなど、特定不正が3件認定された。野尻医師は国循調査委に対し「実験はきちんとやった。データの処理や解析でミスがあった」と故意による不正を否定し、不服申し立てをしたが、却下されたという。

 臨床研究は全国10病院で実施され、計160人に薬が投与された。現在は投与を終えて経過観察やデータの分析をする段階で、健康面に重大な影響は出ていないという。阪大病院は「科学的な妥当性が失われた」として、29日に臨床研究の中止を決定。今後は各病院で健康観察のみを続けていくという。

 国循は野尻医師以外の著者は不正に関与していないと結論づけたが、責任筆者だった寒川(かんがわ)賢治・元国循研究所長にも管理責任があるとして処分を検討している。国循の小川久雄理事長は30日の記者会見で「臨床研究に参加された方をはじめ、国民の皆様、医学研究に携わる皆様に心よりおわび申し上げる」と陳謝した。【松本光樹、近藤諭】

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