なぜ?私学講師の無期転換「5年ルール」進まず…形骸化の背景は

なぜ?私学講師の無期転換「5年ルール」進まず…形骸化の背景は
西日本新聞 2021/2/12(金) 9:54配信

 「九州の私立高で1年契約の講師をしている。採用から5年目に入ったのに、法で定める無期雇用への切り替えがかなわなかった。どこの高校でも同じ状況なのでしょうか」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に、こんな訴えが寄せられた。労働契約法には、非正規雇用が5年続けば期間を定めない無期雇用に転換できる「5年ルール」があり、講師も期待していたという。なぜ、無期雇用に移行しなかったのか、背景を取材した。

 5年ルールは、非正規労働者の雇用安定のため2018年4月から適用が始まった。非正規側が求めれば認めると規定するが、契約書に転換を逃れる「不更新条項」を盛り込むケースが相次ぎ、厚生労働省が制度の趣旨に沿った対応を呼び掛けている。

 講師は16年度に採用。1年契約を4回更新し、20年度に5年目を迎えた。契約書に「更新は5年を超えない範囲」という不更新条項があることは知っていたが、試験に合格して無期雇用になることを期待していたという。

福岡労働局「改善を促すしかない」
 講師によると、同校は「5年以内」を前提としつつ、人材確保とのバランスで無期雇用への移行試験がある。講師は20年夏、筆記と面接の移行試験を受けて不合格だった。理由は告げられておらず、「労働者目線ではなく、経営側の都合で5年ルールが狭く運用されている」と憤る。

 不更新条項について、福岡労働局は「法の趣旨からは望ましくないが、修正させる強制力はない。改善を促すしかない」と説明する。

 5年ルールの形骸化は同校に限らないようだ。

 福岡県は毎年、私立高の運営を支援する助成金を正規や非正規の教員数などに応じて支給している。取材班は関連資料を情報公開請求で入手し、県内全約60校の教員(校長など管理職を除く)に占める非正規比率を算出した。

 それによると、5年ルールが始まった18年度の非正規率は37・6%。17年度の39・5%からわずかに減ったものの、19年度は38・5%と増加に転じた。

 福岡市の私立高関係者は「生徒数が増えない中、人件費が掛かる正規教員は増やせない。無期転換は厳選している」と明かす。さらに「これまでは6、7年と契約更新しながら、ポストが空けば正規教員にする道もあったが、ルールができて柔軟な対応が難しくなった」という。

 県の担当者は「高校は教科数も多い。授業数の少ない教科は、非常勤講師で対応するのは避けられない面もある」と話す。

 投稿を寄せた講師の任期は残り2カ月。「新型コロナが流行する中、3年生は大学受験と卒業を控えている。自分のことより、今はそのサポートに精いっぱい」と漏らした。(竹次稔)

「不更新」有効性は司法でも争点 熊本大の中内哲教授(労働法)
 無期雇用への転換が進んでいないのは、正規との待遇格差を埋める人件費などで負担が増えるからだ。不更新条項を設ける民間企業も多いとみられ、労働契約法が目指す無期転換の促進は課題として残っている。

 労使個別の契約事項となる不更新条項は有効ととらえられるが、法に基づいて適切かどうかは司法でも大きな争点。そもそも、私立高は行政からの助成金があって初めて運営できるものであり、費用負担が増える無期転換にはなおさら後ろ向きになるのだろう。

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