被害生徒を見逃すな…各地の教委が実態調査、スマホで申告も

被害生徒を見逃すな…各地の教委が実態調査、スマホで申告も
読売新聞オンライン 2021/2/16(火) 15:03配信

 教員によるわいせつ行為が相次ぐ中、被害を言い出せない子供たちの声を広く拾おうと、児童生徒へのアンケートなどを通じた実態調査に乗り出す教育委員会が増えている。実際に教員のわいせつ行為が発覚し、懲戒処分につながったケースもあった。子供たちが被害を認識できるよう、「セクハラ」の意味を教える取り組みも進んでいる。

■実施9教委
 読売新聞が昨年10〜11月、全都道府県・政令市の67教委に取材したところ、9教委(秋田県、千葉県、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府、高知県、千葉市、堺市)で児童生徒に「わいせつ被害を受けたかどうか」を尋ねる調査を実施していた。このうち大阪府と静岡県は今年度からスタート。北海道や埼玉県などの11教委は「実施を検討」と答えた。

 千葉県教委の2019年度の調査では、高校の教員が部活の遠征宿泊先などで、女子生徒にマッサージと称してわいせつ行為を繰り返していたことが判明。教員はわいせつ目的であることを否定したが、教委は教員が生徒の体を触ったことを不適切行為と認定し、この教員を懲戒免職とした。

 神奈川県教委も高校生を対象にアンケートを行っており、18年度の調査では「被害を受けた」との訴えを55件確認。その中で、ある女子生徒が男性教員と交際をしていたことが発覚し、これを不適切行為と判断した教委は19年3月に教員を懲戒免職とした。

 神奈川県では、学校が回答用紙を回収するのではなく、生徒が直接教委に郵送する方式を取っているが、新たに今年度から、生徒がスマートフォンからも被害を申告できるようにした。担当者は「自分の手元で操作できるため、誰にも知られずに被害を訴えられる」と話す。

■セクハラ教育
 セクハラの意味を学んでもらう取り組みもある。静岡県教委は今年度から小中学生を対象に被害調査を実施するにあたり、セクハラについて説明するパンフレットを作成した。「相手を不快にさせる性的な発言や行為」と説明した上で、「頭や体をなでられ、いやな気持ちになった」「脚などを写真に撮られた」といった具体的な事例も掲載した。

 子供たちの相談を受けるNPO法人「千葉こどもサポートネット」の米田修理事長は「わいせつ被害を調べる教育委員会が増えているのは評価できる。だが、中には『被害を訴えると自分が困ることになるのでは』と不安に思う子供もいる。被害の訴えは秘密にされることや、調査の目的や方法を子供や親にきちんと伝え、学校が子供を守るというメッセージを発信することが重要だ」と話している。

「司法面接」子供の負担軽く

 わいせつ被害を受けた子供たちにとって、被害の事実や内容を他者に語るのは心理的に大きな負担となる。子供たちにできるだけ負担をかけず、正しく話を聞き出す手法として、「司法面接」が注目されている。

 司法面接は、わいせつ事案や児童虐待の被害についての捜査にあたり、警察、検察、児童相談所の3者が協力し、代表者1人が子供に聞き取りを行う方法だ。

 従来は3者が別々に話を聞いていたが、子供に何度も繰り返し聞くと記憶が変わってきたり、精神的負担が大きくなったりする。まとめて話を聞くことで負担を軽減し、的確に事実を引き出しやすくなるという。法務省によると、全国の司法面接の実施件数は2016年度は306件だったが、19年度には1638件と大きく伸びている。

 警察官や検察官らを対象に司法面接の研修を行っている立命館大学の仲真紀子教授(発達心理学)は「学校内で調査を進める場合でも、司法面接のような手法を採り入れてほしい」と求める。仲教授によると、被害を受けた児童生徒と利害関係のない養護教諭やスクールカウンセラーなどが1対1で対応し、誘導的な質問は避け、事実関係を確認する形が望ましいという。

 萩生田文部科学相も、2月4日の衆院予算委員会で「学校での被害調査にあたり、司法面接という手法もあるということを教育委員会に伝えていきたい」との考えを示した。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする