両親「なぜ命を絶ったのか…」 中1自死から2年 今も続く調査 

両親「なぜ命を絶ったのか…」 中1自死から2年 今も続く調査 
熊本日日新聞 2021/4/18(日) 10:39配信

 2019年春、熊本市立の中学に入学したばかりの男子生徒が自ら命を絶ってから、18日で2年になる。市は1年半を過ぎた20年11月、ようやく詳細調査に着手した。三回忌を迎え、両親は「なぜ息子が自ら命を絶ったのか、真相を知りたい」と願っている。

 19年4月18日午後。男子生徒は自宅マンションの敷地内で発見された。入学式の8日後。母親(46)は現実を受け入れられないまま、病院に駆け付けた中学の校長らに「いじめはなかったと思います」と伝えた。

◆嘆願書

 その日、県警は男子生徒の部屋で大きく「死」と書いたノートを見つけた。生徒が卒業した小学校が、6年生の時、この文字を確認していた。

 母親や市教育委員会によると、生徒が小学校を卒業する直前の19年3月上旬、一部の保護者が担任の男性教諭の処分を求める嘆願書を市教委に提出していた。男性教諭による体罰や暴言で転校した児童がいるという内容だった。

 母親も嘆願書の作成に協力した。生徒も円形脱毛症になり、耳の不調を訴えたことがあった。自死から1カ月後、母親は「ストレスの症状だったと思う。小6時の担任の指導が息子の自死と無関係とは思えない」と中学校と市教委に伝えた。

◆ばらばらに

 市教委の内部では、生徒の自死と、元担任の男性教諭の処分を求める嘆願書という二つの事柄への対応が関連づけられず、ばらばらに進んでいた。生徒の自死は総合支援課、嘆願書は教職員課が担当した。

 総合支援課は19年5月、「小学校からは、いじめ事案等の報告はない」などとした「事件等報告書」を文部科学省に提出。一方、教職員課は同年7月、男性教諭が複数の児童に対して行った計20項目の行為が体罰や暴言、不適切な指導だったと認定していた。

 ただ、市教委から生徒の自死に関する基本調査について説明がないまま3カ月が過ぎ、両親は情報の開示を請求。教職員課が既に把握していた男性教諭の情報は、開示された事件等報告書に盛り込まれていなかった。

◆不信感

 総合支援課は「当時は嘆願書の情報を十分に共有しておらず、自死は学校生活には関係ないとの認識だった。遺族への情報提供も含め、初動に問題があった」と認める。

 文科省は子どもの自死に関する指針で、自死を認知した時点で基本調査に取りかかり、「情報を迅速に整理する」としている。しかし、市教委の報告書がまとまったのは、生徒が亡くなった約1年後の20年3月だった。

 こうした経緯から両親は市教委に不信感を抱くようになった。市は、両親の意向を踏まえて同年6月に条例を改正し、弁護士や精神科医ら外部専門家5人で構成する詳細調査委員会を市長部局に設置。同年11月の初会合を経て、生徒の同級生らの聞き取りを始めた。今後、男性教諭からも事情を聴く方針だ。

 母親は「言葉の暴力を目撃するだけで子どもたちの心は傷つく。男性教諭の行動と息子の死との因果関係をちゃんと調査することが、再発の防止につながると思う」と話す。

 男性教諭は熊日の取材に「自身の考えは詳細調査委でしっかり伝えたい」としている。(澤本麻里子、原大祐)

 2019年4月に熊本市立中1年の男子生徒(当時13歳)が飛び降り自殺し、同市教育委員会が30日、第三者委員会を設置して事実関係などを調べる方針を示した。同日、両親に提出された市教委の基本調査報告書には自殺の原因についての記載が一切なかった。両親は「市立小6年時の担任の不適切指導が関連している」として詳しい調査を求めている。
 生徒は、入学直後の19年4月18日に命を絶った。両親によると、生徒は小6時に担任の男性教諭から同級生が体罰や暴言を受けたことに心を痛め「先生がうざい」と漏らしていた。命を絶つ約1カ月前には、小学校内で生徒のノートに「死」と書いてあるのを別の教諭が見つけたが、両親に報告しなかった。
 市教委は、男性教諭が同小に赴任した14年以降、児童を注意する際に胸ぐらをつかんだり、「バカ」「アホ」と暴言を吐いたりするなど39項目の不適切行為があったことを認めた。両親は自殺との関連を調べるよう市教委に求めていた。

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