夜中にうなされ「みず」と叫び…通園バスに取り残された2歳児、心に深い傷

夜中にうなされ「みず」と叫び…通園バスに取り残された2歳児、心に深い傷
西日本新聞 2021/9/21(火) 10:51配信

 福岡県中間市で7月末に私立保育園に通う男児(5)が送迎バスに取り残され、亡くなった。北海道でも2018年、当時2歳の女児が送迎バスに放置される事故があった。命に別条はなかったが、うなされる夜が続くなど、女児は心に深い傷を負った。「もう放置事故は最後にして」。家族は再発防止を訴えている。

 北海道での事故は18年10月、西興部(にしおこっぺ)村で起きた。朝、園児6人を乗せたバスを保育所で迎えた保育士は5人を降ろしたが、最後尾のチャイルドシートに座っていた女児に気づかず、運転手もそのままバスを離れた。女児の母親(41)から見送りを頼まれた友人が女児をバスに乗せた後、忘れ物に気付いて園へ向かったところ、女児は不在で欠席扱いとなっていた。園は初めて女児を探し、運転手が車内で見つけた。

 放置されたのは約2時間で、医師の診断は「異常なし」。だが母親が診療所に駆け付けたとき、ぐったりした表情の女児は喉元を手で押さえながら、か細い声で「水」と繰り返した。その日から女児は今年初めごろまで、よく就寝中にうなされ「水」と叫んだ。記憶を消したいのか「取り残されたのはお友達だよ」と話すこともあった。

 園児の人数確認や降車時の車内点検が不十分など園の不手際が重なって事故が発生した点は、いずれも中間市の事故と同じとみられる。

 こうした事故は県内外で後を絶たない。小倉北区の保育園では07年7月、園外保育から戻ったワゴン車に2歳男児が取り残され、熱射病で死亡。さいたま市の私立幼稚園では17年9月、3歳男児が送迎バスに5時間放置された。けがなどはなかった。

 北海道の女児の7歳上と5歳上の姉2人は妹の事故後、再発防止を訴えようと「STOP 車内放置新聞」をつくり、妹の事故概要や、車内温度が約50度まで上がった実験結果などをまとめた。

 西興部村は事故後、送迎バスの運用マニュアルを作成。福岡県も運用指針を策定した。ただ女児の母親は、事故が起きた自治体が事後的に対処するだけでは不十分だとし、他の自治体でも安全対策の取り組みが広がるよう求めている。

 「よそで起きた事故も真剣に考え、行動に移してほしい。これ以上、苦しむ子どもを増やさないで」

 (笠原和香子)

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