日大背任 元理事「理事長の許可得ている」強引な手口、関係者が証言
毎日新聞 2021/10/28(木) 19:57配信
日本大学付属板橋病院の医療機器納入を巡る背任事件で、逮捕された日大元理事の井ノ口忠男容疑者(64)側が、意中のメーカーの機器が選定されるよう強引に手続きを進めたと、複数の日大関係者が毎日新聞の取材に証言した。日大の田中英寿理事長(74)の名前を出し、「理事長の許可は得ている」などと病院側に迫ったという。田中理事長は周囲に「知らない」と話しているといい、井ノ口元理事側が理事長の「威光」を利用した疑いがある。
井ノ口元理事と医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳容疑者(61)は、コンピューター断層撮影装置(CT)などの機器7台と電子カルテを板橋病院に納入する取引に、籔本前理事長側のコンサルタント会社など2社を介在させ、日大に約2億円過大となる契約をリース会社と結ばせた疑いが持たれている。関係者によると、井ノ口元理事は容疑を否認しているが、籔本前理事長は起訴された病院建て替えの設計・監理を巡る背任罪の起訴内容とともに認めているという。
複数の関係者によると、井ノ口元理事の知人の医療機器関連会社社長が2020年ごろ、海外メーカーの担当者を連れて板橋病院を訪ねた。社長は見積書を見せながら、老朽化していたCTなどを、これまでとは別の海外メーカーの製品に入れ替えるよう要求。高額な機器を納入する場合、本来は医師の意見を聞くなどの内部手続きが必要だが、省略されたという。
打診は唐突で病院の事務局は難色を示したが、社長から「理事長の許可は得ている」と強調され、強く反対できなかったという。その後、医療機器関連会社の取引先に籔本前理事長側の会社が加えられ、海外メーカーの機器が納入された。籔本前理事長側は取引で約1億9800万円を不正に得た疑いが持たれている。
病院関係者は「高額機器の選定は通常は複数の業者を競わせるが、それもなかった。医師の意見を聞かずに決めることはあり得ず、打診があった時には納入機器が決定済みなのだと感じた」と証言した。【志村一也、二村祐士朗、松尾知典、井口慎太郎】