長引くいじめ調査…1年4カ月たつ事案も 先が見えない被害者側は不信感「本当に公平?」 鹿児島市
南日本新聞 2022/11/13(日) 13:36配信
鹿児島市で発生した、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態の調査が長期化している。国は調査終了の目安を示しておらず、10日時点で開始から最長1年4カ月以上たつケースも。先が見えない中、被害者側は不信感を募らせている。
現在調査中なのは重大事態「疑い」を含め計14件。うち市教育委員会で設置した第三者委員会が7件、学校主体で7件扱っている。
■「過小評価」
調査案件のうち2020年に発生した中学2年生へのいじめは、21年7月から第三者委が調査を始めた。被害生徒の保護者によると、第三者委は今年6月末に市教委へ答申する報告案をまとめた。ただ保護者は「事実でないことやいじめを過小評価する内容があった」として修正を要求。その後答申自体が延期された。
保護者によると、調査の定期的な経過報告がなく、被害生徒へのアンケートや電話での聞き取りも1度だけだった。「これで区切りと思っていたが、さらに傷つけられた。第三者委は本当に公平なのか」と憤る。
同じく21年7月に調査が始まり、当初は重大事態「疑い」とされた19年発生の中学2年生の事案は、22年2月に被害者側が調査打ち切りを申し出た。第三者委の調査終了時期が見通せない中、他の事案が増え続ける状況を懸念したためだ。市教委は同事案を含む14件すべてを「調査・審議中」と説明。打ち切り要請については「報告書が出ていない個別事案にはコメントできない」としている。
■臨時委員増員
国は調査に関するガイドラインで速やかな着手を求めているが、終了時期について明記していない。市教委は、事案増加を受け第三者委に臨時委員9人を増員。22年5月から15人態勢とした。長期化について、市青少年課の吉元利裕課長は「関係者に心労をかけているのは申し訳ない」としつつも、「しっかりした結論を出すには慎重な調査・審議が必要なことを理解してほしい」と話す。
いじめ調査に詳しい千葉大学の藤川大祐教授(57)=教育方法学=によると、調査開始の遅れをはじめ手法や内容に被害者側が不信感を抱く事例は全国で多い。藤川教授は「調査は、被害者側が申し立てた内容を基本にすべきだ。相手側と整合性が取れなければ『確認できなかった』と示した上で報告に入れる必要がある」と指摘。不信感を取り除くには調査状況の丁寧な説明が必要、と訴える。