保護者から相次いだ苦情、体罰の訴え軽視した元小学校長「責任感じている」…中1男子が自殺
読売新聞オンライン 2022/12/17(土) 10:35配信
熊本市で2019年4月、市立中学1年の男子生徒が、小学6年時の担任教諭の不適切な指導が影響して自殺したとされる問題で、生徒が通っていた小学校の校長だった男性(62)が読売新聞の取材に応じた。元校長の話からは、担任への指導の甘さと、被害の訴えや報告を軽視していた実態が浮かび上がった。
元校長は16年度に市立五福小の校長として着任したが、元教諭(60)については、保護者からの苦情などが相次いでいた。
元校長は「トラブルが起きるたびに元教諭と面談し、10回は指導した。不適切な言動、体に触れる指導はしないよう繰り返し、素直に聞いているように見えた」と振り返る。
ただ、「音楽の授業で子供の腹を殴ったのでは」と保護者から訴えがあった際には、「腹筋を使うようにという指導」との元教諭の説明を信じ、市教委には体罰ではなく「不適切な指導」として報告した。
児童、保護者を対象に体罰の有無を尋ねるアンケートでは、複数の保護者が元教諭の体罰があったと証言しているが、市教委に報告していなかった。元校長は「被害の当事者によるものではなく、すべて伝聞情報だったため」としている。
■「人員余裕なく」
元教諭は問題行動が多かったために担任から外されており、元校長はそうした引き継ぎも受けていたが、6年生の担任にした。「希望したのが彼だけだった。不安はあったが、指導で徐々に変わっていた」と説明する。
だが、元教諭は担任になった直後の18年4月に児童の胸ぐらをつかむ暴行をし、熊本区検に書類送検されて不起訴(起訴猶予)となった。児童は全治1週間の首の打撲と診断され、保護者は担任から外すよう求めたが、元校長は応じなかった。「限られた人員で余裕がなかった」という。
■命守る機会奪う
自殺した男子生徒は小学校の卒業が近づいた19年3月、ノートに「死」「絶望」などの文字を書いていた。元教諭とは別の教諭が気づき、元校長は報告を受けたが、男子生徒の両親には伝えなかった。
元校長は「ストレス発散と軽く考え、重大に受け止めなかった」と語る。男子生徒が自宅マンションから飛び降りたのは、その約1か月後だった。
今年10月に公表された市の第三者委員会の報告書では、元教諭が「(元校長らから)指導を受けたことはない」と述べていることを踏まえ、「元校長らの指導は、指導を受けたと認識できるものではなかった可能性がある。管理職の対応は不十分であったことは否めない」と指摘。ノートへの書き込みを男子生徒の両親に知らせなかったことについては、「保護者が我が子の言動に注意を払い、命を守る機会を奪う結果を招いた」としている。
市教委は22日に元教諭の上司らの処分を決める方針だ。元校長は「あれだけ何度も指導したのに、伝わっていなかったのは残念だ。取り返しのつかないことが起きてしまい、責任を感じている」と話した。
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