いじめ関与の生徒名「開示」「非開示」、第三者機関の対応に違い 熊本県立高での2件 県「調査の性質異なる」
熊本日日新聞 2022/12/30(金) 10:05配信
熊本県立高2校で起きたいじめに関わった生徒の名前を被害者側に示すかどうかを巡り、原因などを調べたそれぞれの第三者機関の対応が非開示、開示と分かれていたことが29日、分かった。県は「調査の性質が異なる」としている。
2013年に自殺した県央の高校3年の女子生徒=当時(17)=に対するいじめの調査では、県設置の第三者機関が非開示を決定。遺族が県と同級生8人に損害賠償を求めた訴訟で、県は生徒名を記した報告書の提出を拒んでいる。
一方、元東稜高生が不登校になったのを受けて学校が設置した第三者機関は、複数の同級生による7件のいじめのほか、不登校との因果関係を認定。10月に学校と被害者側へ報告書を渡した。
この報告書はいじめに関与した生徒らの名前をA〜Fのアルファベットで記載。被害者側にはA〜Fに対応する実際の名前を記した別紙も添付し、誰が、どんな関与をしたのか明示した。東稜高を管理する県教育委員会は「被害者は存命で、関与した生徒を特定して被害を訴えた。生徒名は既知の事実だった」と説明した。
女子生徒へのいじめを巡る裁判では福岡高裁が、関与した生徒名を黒塗りにしていない報告書を熊本地裁に提出するよう命令。県は不服とし、7日に最高裁へ特別抗告した。
県は「事実関係を明確にする学校の調査と異なり、県の調査は再発防止が目的。法律上も遺族への説明までは求められていない」と説明。生徒名を開示すれば今後の調査に支障が生じる恐れがあるとしている。
遺族は「娘が亡くなる厳しい状況なのに、情報を開示しないのは納得できない」と話している。(臼杵大介)
■「知る権利」か 「事実解明」か
県立高で起きたいじめに関わった生徒名の開示を巡り、異なる対応のあったことが分かった。県が福岡高裁の開示命令を不服とし、最高裁に特別抗告したケースは専門家も含め、遺族の知る権利と事実解明のどちらを優先するかで見解が分かれている。
女子生徒が自殺したケースでは遺族が学校調査を不服としたため、県が設置した第三者機関が調査の妥当性を再調査した。
県はいじめ防止対策推進法の規定について、学校調査で事実関係を明確にし、被害を受けた側へ適切に情報提供するよう定めていると説明。一方、県の再調査は文部科学省の指針で、プライバシーへの配慮が求められるとしている。
別の子どもの自殺に関する第三者機関で委員長を務めた吉田道雄・熊本大名誉教授は「遺族の心情は理解できるが、第三者機関の調査に法的強制力はない。生徒名を開示すれば調査への協力が得られにくくなり、遺族が求める事実解明が困難になる恐れがある」として、県の主張に一定の理解を示している。
これに対し、別の訴訟でいじめに関与した生徒名の開示を求めた齋藤裕弁護士(新潟県弁護士会)は「学校調査と県の再調査は、いずれもいじめ防止対策推進法に基づいており、そこまで趣旨が違うとは思えない。遺族が知らないから開示できないというのは、遺族に寄り添った対応とはいえない」と疑問を投げかけている。(臼杵大介)
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