下着盗まれた女性教員「被害届の提出を止められた」 学校、市教委の「誤った認識」
産経新聞 2023/7/23(日) 18:00配信
で、当時の校長(定年退職)と同市教育委員会が女性に被害届を提出しないよう働きかけていたことがわかった。さらに、市教委は滋賀県教育委員会への事件報告で、「(報告が遅れたのは)女性が被害届の提出を迷っていた」と事実に反する説明もしていた。市教委は一連の対応を問題視し、再発防止のために検証を実施して、報告書にまとめた。詳報する。
◆「影響考えて」
事件は昨年6月16日に発生、同小の女子職員更衣室のロッカーから女性の下着1点が盗まれた。女性と校長が同22日に滋賀県警守山署に相談、女性は被害届の提出を決めた。その後、校長が市教委の向坂正佳(さきさか・まさよし)教育長らと協議し、状況が一変する。
協議結果として校長が「現場検証で警察が入ることで子供や同僚への事情聴取があるかもしれない。学校の混乱が起きることへの影響を考えてほしい」と女性に被害届の提出断念を要請したのだ。女性は「納得できなかった」が、子供への影響を考えて提出を断念、23日に校長に伝えた。
24日になって男性教諭が学校側に盗みを申告した。しかし、学校と市教委は警察に届けず、県教委にも報告しなかった。男性教諭は同日以降、体調不良を理由に休職したという。
◆女性は心身に不調
「(事件を)児童や同僚に話せないことで、隠しているように感じて苦しくなり、心身の不調が出てきた」「加害者は罰を受けるべきである」
考え続けた女性は今年1月21日、弁護士とも相談して被害届を提出した。市教委も事件について同13日に県教委に報告したが、報告遅れの理由については、「女性が被害届の提出を迷っており、被害者保護の観点から県教委への報告も含めて公表を控えるべきと考えた」と事実に反する説明をしていた。
今年6月20日、県教委が男性教諭の懲戒処分を発表した会見で、「女性が被害届の提出を迷っていた」と市教委の報告通り説明。これに対し、女性が「事実と違う」と県教委に抗議したため、今回の問題が明らかになった。
◆信頼の回復いかに
13日に守山市役所で会見した向坂教育長は、女性を止めた理由として「学校現場の混乱を防ぐため」と説明。そのうえで、「被害者が被害届の提出を止(と)められたと感じ、提出を遅らせたこと。被害者に寄り添った対応が十分できなかったこと。速やかに県教委に報告しなかったことや、加害者処罰の明確な方向性を示した対応ができなかったことについて、おわび申し上げる」と頭を下げた。
上司である校長、市教委から「子供、同僚への影響を考えてほしい」といわれれば、被害届の提出を止められたと受け取るのは一般社会では当たり前。なのに、検証後に及んでも「被害者が被害届の提出を止められたと感じ」と、女性の誤解、勘違い、先走り、を匂わせる発言。ことの本質がわかっているのかと首をかしげざるを得ない。
学校、市教委の「誤った認識」が引き起こした今回の一連の問題。今のままでは、被害者の女性、児童や保護者、そして、市民の信頼を回復するのは容易ではないだろう。(野瀬吉信)
ほかに、昨年6月の勤務中に女子更衣室に侵入し、ロッカーから同僚教員の下着1点を盗んだとして、守山小学校の男性教諭(33)を懲戒免職にした。