「同僚の行為、我慢できず」告発教員が初めて語る 旧天竜林高校事件15年

「同僚の行為、我慢できず」告発教員が初めて語る 旧天竜林高校事件15年
あなたの静岡新聞 2023/8/21(月) 8:50配信

 2008年4月、事件は静岡県教委に送られたによって露見した。

 <天竜林業高校においては(平成)19年度、大学進学者の成績改ざんがおこなわれました。(中略)管理職も改ざん行為を把握していたにもかかわらず黙認しておりました>

 送り主は、当時同校に勤めていた教員。事件後初めて取材に応じた元教員は、「この文書を送ったのは私に間違いない」とし、改ざん行為は当時の教員間では周知の事実だったと証言する。「当時の同僚教員らの士気とモラルの低さを問題視していた。改ざんした同僚に我慢ならなかった」と告発に込めた思いを明かした。

 08年6月9日、県庁記者クラブに第2の告発状が送られ、事態が動いた。「天竜林業高等学校職員」を名乗る人物が、成績改ざんへの県教委の対応を批判し、報道関係者に不正の調査を呼びかける告発状だった。文末には、関与した人物として元校長(75)と当該生徒の祖父で元天竜市長(91)らが名指しされていた。最初の告発状を出した元教員は「これは自分は書いていない。内部の者だろうが、誰かは分からない」と語る。

 県教委は関係者の調査を進め、改ざんの実態を把握。生徒2人の改ざんに関わった教員4人を減給処分とした。一方で7月には、教員に改ざんを指示したとして元校長を刑事告発した。処分を受けた教員のうち1人が今年6月下旬、取材に応じ、元校長の関与について「校長の指示うんぬんについては話したくない。意図しない臆測が生まれるだけだ」と言及を避けた。その上で「改ざんした責任は感じている。相談した同僚も、それが当たり前だという認識だった。誰も止めてくれなかった」と言葉を絞り出した。

 元校長は08年8月中旬から、自宅付近に浜松ナンバーの黒い車が止まっていることに気付いていた。同21日朝、散歩中の元校長にスーツ姿の男が向かってくる。「刑事さんですね。どうぞ」と自宅に招き入れた。家宅捜索の後、任意同行を求められた。元校長は自らの車に刑事を乗せ、浜北署へ向かった。この時は、345日間も自宅を留守にするとは夢想だにしていなかった。

 車中、刑事は「何であんなことをしたんだ」と繰り返したが、「私は何もしていません」と応じ続けた。翌22日も厳しい取り調べが続き、同日夜、元校長は逮捕された。容疑は成績改ざんに絡む虚偽有印公文書作成・同行使だった。

 一方で、同時期に元市長の任意取り調べも始まった。成績改ざん事件は、身内の大学進学に絡む元校長と元自治体トップの贈収賄事件へと捜査の射程が伸びていた。

      ◇

 元校長の逮捕から22日で15年を迎える旧天竜林高を舞台にした大学推薦入試の調査書改ざん・贈収賄事件。有罪確定後、贈賄側と収賄側のいずれもが無実を訴えて再審を求める展開になっている。関係者の証言を基に事件を振り返る。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする