福岡の保育園で3歳児が「抜け出し」 園、30分不在気付かず
毎日新聞 2023/9/13(水) 13:54配信
福岡市博多区の認可保育園で、保育中の女児(3)が1人で園外に抜け出していたことが13日、市への取材で判明した。女児が園から約500メートル離れた場所で保護されるまで、園は女児の不在に気づかなかった。市は6月にも別の保育園で4歳児が園外に出る事案が起きていたことを明らかにした。今後、各園に再発防止を指導する。
市によると、女児が園を出たのは5日午前10時ごろ。登園した3歳児クラスの14人は、行事が開かれる別の部屋に移るため、園内の外廊下に整列していた。本来2人いる担任保育士はこの日は1人で、園児たちが外廊下から行事の部屋に入場する際のピアノ演奏をするため、数分間、目を離した。この時に女児が外廊下とつながる玄関で靴を履き、園庭を通って正門を出たとみられる。
正門は必ず閉めることになっているが、この日は別のクラスで園外に出る行事のため開け、その後、職員が閉め忘れていた。
女児は午前10時半ごろ、同じ園に通う子どもの保護者が勤務する同区内の店舗前で発見、保護された。けがはなかった。女児は交通量が多い片側4車線の大通りの横断歩道を1人で渡った可能性があるという。
市内では6月13日にも、南区の認可保育園で女児(4)が1人で園外に出ていた。午前8時40分ごろ、女児が「トイレに行く」とクラスを離れた後、戻って来ないのを不思議に思った職員が確認したところ、姿が見えなくなっていた。5分後に自宅近くで女児の保護者が発見。登園時間で開いていた正門から抜け出したとみられる。
市指導監査課の担当者はいずれも「一歩間違えれば命に関わる重大事案」として、「当時の細かい状況などをきちんと確認し、再発防止に関して各園に指導する」と話した。
同種事案では、広島市で2022年4月、市立保育園の男児(5)が園を1人で出て近くの川の放水路に向かい、溺れて死亡した。
広島大大学院の七木田敦教授(幼児教育学)は「園児の抜け出しが起きる可能性の高い時間帯やタイミングを整理し、各園の事情に即したマニュアルを作って園内の体制を見直すべきだ」と指摘する。七木田教授が園長を務める同大付属幼稚園では22年、園児の抜け出しを想定した対応訓練を初めて実施したといい「緊急時の連絡先を確認するなど、訓練をして気付いたことがたくさんあった。各園で共通する危険性の高い事例や、重大事案につながりかねない『ヒヤリハット事例』などは広く注意喚起する必要がある」と話す。【竹林静】