「おい、話の途中でおしっこか」東京芸大女性教授アカハラか 深夜に1時間叱責

<独自>「おい、話の途中でおしっこか」東京芸大女性教授アカハラか 深夜に1時間叱責
産経新聞 2024/4/9(火) 18:04配信

古い芸術作品をよみがえらせる修復家を数多く養成し、国内の油画修復研究をリードしてきた東京芸術大大学院文化財保存学専攻の研究室で、トップを務める50代の女性教授からアカデミックハラスメントを受けたと複数の学生や職員が訴え、大学側が研究室の学生募集を停止したことが9日、大学関係者への取材で分かった。職員も相次いで離職しており、国内でも数少ない修復家の養成機能の維持が危ぶまれている。

女性教授は産経新聞の取材に、ハラスメント行為を否定しながらも「非常にまずい状態であることは自覚している。心配をかけて申し訳ない」などと釈明。大学側は募集停止に至った理由を明らかにしていない。

複数の大学関係者によると、教授がトップに就いた平成31年4月以降、複数の学生や教員が暴言を浴び、大声で叱責を受けるなどの被害が続出。深夜に1時間以上も交流サイト(SNS)上で叱責された学生は、疲労で返信を5分ほど放置していると、「おい、話の途中でおしっこかっ」と詰め寄られ、20本近いメッセージが連続で送信された。

こうした言動を問題視した大学側は令和4年2月、教授を減給の懲戒処分としたが、以降も被害の訴えはやまず、昨年7月に複数の女子学生が大学側に相談。非常勤職員も心身の不調から任期途中で相次いで退職した。大学側は令和6年度は研究室の新入生を募集せず、大半の在籍生の指導から教授を外しており、教授自身も指導から外れたことは取材で認めた。

大学側は募集停止について「美術工芸品の修復を行う人材の育成は非常に重要な役割。教育活動に支障が生じる恐れがあれば改善に努める」と説明。停止の理由は「回答を控える」とした。これに対し、被害を訴えた学生の一人は「大学から『教授のハラスメントを理由に学生募集を停止した』という趣旨の説明を受けた」と証言した。(調査報道班)

◆アカデミックハラスメント

大学など研究・教育の場で指導教員らが権力を利用し、学生や教員に対して行う不適切な言動による嫌がらせ。能力・人格を否定するような発言や指導の放棄、不公平な評価のほか、研究発表活動の制限などが挙げられる。加害側に嫌がらせの意図がない場合も含まれる。

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「理想と程遠い研究生活」 芸大アカハラ疑惑、名門研究室が崩壊危機
産経新聞 2024/4/9(火)19:32配信

国内の油画修復の礎を築いてきた東京芸術大大学院の名門研究室が、女性教授のアカデミックハラスメント疑惑で「崩壊」の危機に直面している。アフガニスタンの壁画や19世紀フランスの画家、ミレーの作品修復など、先駆的な実践研究で重要な役割を果たしてきたが、修了生からは「理想とは程遠い研究生活だった」との声も。大学側の対応次第では専門的人材の供給スキームが崩れ、国際プロジェクトにも影響を与えかねない。

「芸術界の東大」とも称される東京芸大。女性教授によるアカハラ疑惑が浮上し、学生の募集が停止された大学院文化財保存学専攻の研究室は、芸大の看板の一つだった。

山梨県立美術館が所蔵するミレー作「種をまく人」の修復や、平成23年の東日本大震災で被災した芸術作品の修復事業、アフガニスタンから流出していた壁画片を修復、返還する国際プロジェクトの中核を担うなど、国内の油画の保存・修復研究をリード。高度で専門的な技法を身につけようと、芸大の他専攻の学生や全国の美術大出身者らがこぞって学んでいた。

ただ、女性教授の指導を受け、すでに修了した女性は「(教授からの暴言などで)まともな教育を受けられず、理想とは程遠い生活だった。残っている後輩も本当にかわいそう」と証言。募集停止によって研究室が機能不全に陥る可能性を危惧している。

研究室の源流は国内の西洋画保存・修復研究の草分け的存在である寺田春弌(しゅんいち)(1911〜79年)に遡(さかのぼ)る。寺田の弟子で東京芸大大学美術館館長も務めた歌田眞介氏が研究室を発展させ、国内で活躍する数多くの人材を輩出した。

文化財の保存環境の助言などを手がける「文化財虫菌害研究所」(東京)の三浦定俊理事長によると、修復技術の研究にとどまらず、幕末から明治初期に活躍した洋画家、高橋由一(1828〜94年)の再評価など、近現代日本洋画の歴史研究にも貢献したという。

三浦氏は「国内における油画修復研究の根はこの研究室にあるといっていい」と評しつつ、「歴史的にも大きな役割を担った研究室が、学生を出せない事態となれば、とても残念なことだ」と語った。(花輪理徳)

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