秦野市立南中で生徒主導のいじめ防止活動、全校集会やSOS箱/秦野

秦野市立南中で生徒主導のいじめ防止活動、全校集会やSOS箱/秦野
カナロコ 2013年1月28日(月)14時0分配信

 学校でのいじめが全国的な問題となる中、生徒が中心となっていじめ防止に取り組む秦野市立南中学校(同市緑町、生徒数515人)の活動に注目が集まっている。過去に生徒がいじめで不登校になった苦い経験を生かそうと、地域住民も交えて対応や防止策を考える全校集会を毎年開催。定期的なアンケートで実態把握と解決を図っており、県教育委員会も「継続している点も含め非常に特徴のある取り組み」として、その成果と広がりに期待を寄せている。

 「前に通っていた中学では嫌がらせをされていました。大切な物をたたきつけられたり、廊下を歩いていたら避けられたりして、毎朝、教室に入るのが苦痛でした」。同校体育館で9日に開かれた毎年恒例のいじめ防止全校集会。男子生徒の一人が重い口を開いた。突然の告白に参加者が静まる中、生徒はこう結んだ。「だけど周りには話し掛けてくれたり、心配してくれる仲間がいました」

 集会では、人権啓発ビデオを視聴し、自分に置き換えてクラス内のいじめをどう解決するかを討論。「学校全体で取り組む」「友達と協力する」「皆でいじめられている人に話し掛ける」など五つの選択肢の中から生徒一人一人が選び、学年を超えて意見を交えた。市青少年指導員やPTA役員も議論に加わった。

 米山和久校長が同校に赴任した2006年4月。いじめが原因で不登校になっている生徒がいた。その教訓から本格的に活動に乗り出し、クラスごとに消防職員や終末期医療に関わる関係者らを講師に招いた講演会を毎年開催。命の大切さを生徒に伝える取り組みも、いじめ防止につながっているという。

 生徒による発案もあり、「1学期はいじめを訴える『SOSボックス』を設置した」と生徒会長。「今後は小学校と連携したりしながら、いじめ防止に取り組みたい」とも話す。

 活動の結果、いじめの意味や行為に対する理解も進んでいるとみられる。6月と12月に実施する無記名アンケートでいじめを感じているかどうかの設問では、当初は50%を超えていた「はい」という回答が最近は数%にとどまっている。米山校長は「07年度以降はいじめによる不登校の生徒はいない。いじめをゼロにすることはできないが、解決は百パーセントできる」と手応えを感じている。

 全校集会は県教委や市教委の担当者も視察。県教委子ども教育支援課の担当者は「子どもたちが主体でいじめ防止に取り組む事例は増えてきたが、何年も継続している南中学校の活動は特徴的」と注目。昨年3月には県教委主催の「かながわ元気な学校づくり全県生徒代表総会」で同校生徒が活動を発表した。

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