自殺で息子を失った両親、校長研修で講演「子どもの声に耳を」/川崎
カナロコ 2013年1月30日(水)16時0分配信
2010年6月、川崎市立中学3年だった篠原真矢(まさや)さん=当時(14)=を自殺で失った父宏明さん(48)と母真紀さん(46)=ともに同市麻生区=が29日、同市中原区の市教育会館で開かれた校長研修の場で講演した。「先生の言葉一つで子どもの生死が分かれることを知ってほしい」。遺族が持つ切実な思いを、市立学校校長166人の前で語った。
「息子の真矢は約2年半前の6月7日、『友だちをいじめから守れなかった』と遺書を残し、自宅のトイレで自ら命を絶ちました」
黒いスーツとネクタイ姿で壇上に上がった宏明さんは、わが子が亡くなった経緯をゆっくりと話し始めた。
真矢さん自身も2年生の時、殴られたり下着を脱がされたりする被害に遭っていた。宏明さんは「自殺後にそれをいじめと認識する先生は皆無だった」と、いじめへの感度が極めて低かった当時の学校の状況を率直に打ち明けた。
担任教諭や自分たち両親が真矢さんのSOSに気づけなかったことで、死に至ってしまったと振り返った宏明さん。「いじめは私たち大人の問題。子どもの声に真剣に耳を傾け、命の危険にさらされている危機感を持つことが求められている」と訴えた。
さらに「被害者責任論」について言及。「『いじめられている方にも落ち度がある』『自殺する子は弱い』という人がいるが、いじめは加害者への指導が重要。絶望のふちで悩んでいる子の存在を決して忘れず、互いの違いを認め合うことの大切さを教えていってほしい」と呼び掛けた。
市立向丘小の江間薫校長(58)は「子どもたちのSOSにいち早く気づけるよう、篠原さんのお話をしっかりと教員たちに伝えたい」と話した。
篠原さん夫妻は講演終了後、「大きくうなずいてくれるなど、校長先生たちがとても真剣に聞いてくれた。感銘を受けました」と語った。
この日は別室などで、市教育委員会の職員ら55人も講演を視聴した。