<体罰>東海3県、教員処分76件 うち懲戒9件
毎日新聞 2013年2月17日(日)2時30分配信
東海3県(愛知、岐阜、三重)の公立学校で07年4月から13年1月までの間、児童生徒に体罰を加えた教員に対する処分が計76件に上ることが、毎日新聞の取材で分かった。懲戒処分は9件で、残る67件は、より軽い訓告などの処分だった。愛知では、大けがをさせたのに懲戒ではなく、軽い処分で済ませているケースも何件かあり、処分基準のあいまいさが明らかになった。
3県教育委員会に体罰事案の文書について開示請求し、公開された資料(保存されている07年4月以降)などに基づき集計した。内訳は、名古屋市をのぞく愛知49件、岐阜5件、三重22件。このうち懲戒処分は愛知2件(戒告のみ)、岐阜0件、三重7件(減給2件、戒告5件)だった。2件とも12年6月に発生した愛知の場合、07年4月から12年3月までの5年間は、骨折・捻挫など3件、鼓膜損傷6件などを含む計30件で何らかのけがをさせていたが、全て訓告で済ませ、懲戒処分はなかった。これらの訓告事例には高校駅伝の名門、県立豊川工業高校陸上部監督の教員がデッキブラシを使い生徒にけがをさせた体罰も含まれている。懲戒処分がなかった岐阜では児童生徒が負傷したケースはなかった。
体罰を行った教員に対しては、地方公務員法に規定された懲戒処分と、訓告や厳重注意の内部処分があり、その判断は各教育委員会に委ねられている。愛知県教委は「過去の事例や(体罰の)前後関係、けがの状況、背景なども含め判断している」と説明している。
一方、愛知県教委が大阪市立桜宮高校の男子生徒の自殺を受けて実施した緊急調査の結果、昨年4月以降、高校30校の52人が体罰をしていたことが判明、うち8割が学校から県教委に報告されていなかった。この76件以外にも表面化していない体罰事例が多数あるとみられる。【道永竜命】
——
<体罰>愛知県、軽い処分 骨折や鼓膜損傷も「訓告」
毎日新聞 2013年2月17日(日)2時30分配信
教員の体罰で骨折・捻挫など3件、鼓膜損傷6件−−。なぜこれらが懲戒処分より軽い、訓告処分なのか。東海3県のうち、とりわけ愛知県で大半が訓告や厳重注意といった軽い処分で済まされている実態が判明した。教育現場の体罰に対する認識の甘さが問われている。【道永竜命】
愛知県教委が公開した文書などによると、訓告処分となった事例の中には、他の生徒に威圧的な態度をとり続けたとして、中学生の頬を5回平手打ちし、負傷させた▽指示を聞こうとしなかった小学生に感情的になり、顔をたたいて鼓膜を損傷させた−−などの体罰のほか、特別支援学校に通う生徒の頭を陸上用スパイクでたたき負傷させた▽部活動の指導中、女子中学生の胸ぐらをつかんで廊下へ引きずり出し、制服が破れるなどして精神的ダメージを与えた▽特別支援学校で私語が過ぎるからと約20分間にわたり生徒の口に粘着テープを張り続けた▽運動会の練習中、目標に達しなかった小学生に「死ね」と暴言を吐いた−−など指導の範囲を逸脱した行為が少なくない。
の担当者は「県により処分に差があることは認識しているが、熱心な指導が高じ、結果的にけがをさせてしまっていることもある」と釈明、「過去のことは過去として、今後は各学校に体罰禁止の指導を徹底したい」と述べた。
一方、三重は懲戒処分の基準が愛知とほとんど変わらないが、負傷していない場合でも懲戒処分にしたケースがあるほか、過去に体罰を行った教員に対しては懲戒処分の中でも停職の次に重い減給とするなど、愛知よりも重い処分が目立つ。三重県教委は「児童生徒の状況や様態など総合的に勘案し処分を決めている」としている。
元中学教師で鳴門教育大学大学院の阪根健二教授(学校教育学)は「体罰は基準が不明確で(処分などの)数が現状を示しているとは言えない」とした上で「この機会にささいな事案も含めてつまびらかにし、数の多寡ではなく、実態はどうなのか、どうあるべきかを考えるきっかけにすべきだ」と指摘している。