しどろもどろ会見、泥仕合…「大産大・やらせ受験」迷走

しどろもどろ会見、泥仕合…「大産大・やらせ受験」迷走
産経新聞 2013年5月5日(日)20時45分配信

 大阪産業大(大阪府大東市)が入学意思のない付属高生に受験を依頼したとする「やらせ受験」問題は、本山美彦学長が辞意を表明する事態に発展した。本山学長が4月12日の会見で「大学の組織的関与はなかったと思う」と述べた10日後、当時の付属高の元教頭が組織ぐるみだったと証言。学部長らに辞任を迫られる結果となった。大学側は問題発覚後約1カ月、公式な会見を行わないなど、対応の遅れも目立ち、内部からは「組織を解体するくらいの気持ちで、学校運営を見直すべきだ」と批判が強まっている。

 ■ついに「辞任」を口に

 「第三者委員会の結論が出たら辞任する」

 4月23日に開かれた各学部長や幹部職員との会議で、やらせ受験問題の責任を問われた本山学長は、こう辞任の意向を示した。問題を調査する第三者委は、5月末にも結果をまとめ、公表する予定だ。

 関係者によると、この会議の席上、本山学長は「学長不在の期間ができるだけないよう、次の学長を早く選んでほしい」という趣旨の発言を行ったという。3月中旬の問題発覚以降、再三にわたって学内から進退を問われていた学長が、ついに決断を下した瞬間だった。

 この問題は、今年1月に文部科学省への内部告発で発覚した。告発内容や大阪府の調査によると、大産大は21年度の経営学部入試で、推薦入試などで入学者が予想を上回り、国からの補助金がカットされる定員超過となる可能性が高まった。そこで、付属高の当時の教頭に依頼し、入学意思のない生徒9人に一般入試で日程別に延べ30回受験させたとされる。

 また、23年度入試では、京大など国公立大進学者を多数輩出する系列校の大阪桐蔭高にも、偏差値の維持のため大産大への受験を依頼したとみられている。

 実は、当時の教頭は、退職後の23年9月に、現在の理事長あてに関与を告白する文章を送っていた。しかし、大学からの聞き取り調査などの要請には応じなかったため、大学側は「事実が確認できなかった」とあいまいなまま調査を終了していた。

 だが、元教頭は問題が表面化した後の今年4月22日になって大学側との面談に応じた。関係者によると、元教頭は同席した本山学長に、21年度の経営学部の入試にあたり、20年12月、当時の大学の入試担当者から「このままでは(入学者が増えすぎて)国の補助金が受け取れない」などと「やらせ受験」の依頼があったと話した。

 その際、協力した生徒に対する謝礼の支払いについても大学側から提案があったことから、元教頭は金銭の支出について前理事長に確認。前理事長も「大学の言う通りにやってほしい」と指示したと証言している。

 ■関与の有無は二転三転

 問題は、今年3月17日に明らかになり、翌18日、報道陣が大学に詰めかける騒ぎになった。しかし、大学側は「以前の報道で、不正確な報じられ方をしたことがあり、テレビカメラの取材は受けたくない」と取材を拒否。その後約1カ月間、大学として正式な対応は行われなかった。

 4月12日にようやく記者会見に臨んだ本山学長は「世間の皆様をお騒がせして誠に申し訳なく思っています。心よりおわびします」と謝罪。会見がこの日になった経緯については「学内からも会見を開くよう声明が出ており、そういう声にも背中を押された。機を逸した感はあるが、あえて記者会見を開催させていただきます」と述べた。

 しかし、報道陣との質疑応答が始まり、やらせ受験への関与について問われると、大学側の説明は二転三転した。当初、本山学長は「大学の組織的関与はなかったと思っている」と一度は断言したものの、認識を再度問われると、突然言を左右にし始めた。

 「これは私個人の調査の範囲のことでして、大学全体の総意というと、それは違うということに…」

 あいまいな回答に、報道陣からは「学長は一体どういう立場で会見をしているのか」「無責任ではないのか」と質問が相次いだ。

 手元の資料を読み返すばかりの本山学長は「とはいえ第三者委員会の調査結果次第では、違うこともありえます」としどろもどろ。

 その第三者委についても、大学側は「委員は弁護士、教育委員会関係者、学校関係者、マスコミ関係者の5人」と説明するだけで、メンバーは非公表にする方針を示した。理由について問われると「事前に取材などされると困るので」と繰り返し、歯切れの悪い説明に終始した。

 ■辞任求める教職員

 説明の遅れや、あいまいな対応が続く大学側に対し、学校関係者は強い憤りを隠さない。

 そもそも、ここ数年、大産大では不祥事が相次いでいることも関係者の悩みだ。平成21年には、法人の資産運用を目的とするデリバティブ(金融派生商品)取引で、60億円にのぼる評価損が判明した。

 一方、付属高では、20〜23年に、大阪市立中や大阪府寝屋川市立中の校長らを飲食接待していたことも発覚している。付属高は生徒の獲得を目的とした飲食であることは否定したが、イメージに傷がついたことは間違いない。

 22年から現職となった本山学長は学長選で、不祥事が続いた大学のイメージを改め、体質刷新を掲げて当選したという。

 ある教授は「一連の不祥事は、学校法人の金もうけや受験生獲得を第一とする体質が現れたもの。改革を目指した本山学長も、学校に染みついた体質は変えきれなかったのではないか」と嘆く。

 そして、「今の大産大のままなら、入学希望者が増えるはずがない。不祥事を隠蔽(いんぺい)する体質を一新し、大学解体と呼べるような組織改革を行わなければ」と話した。

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