いじめ対策法案、難航 「親の知る権利」反映を 子供自殺の遺族ら訴え
産経新聞 2013年6月8日(土)7時55分配信
「いじめ対策法は待ちに待った念願の法律だが、たたき台の与党案に、学校の保護者に対する説明責任が十分に明記されていない」。いじめ自殺で子供を失った遺族らは、法案に「親の知る権利」が反映されるかどうか注視している。(篠原那美)
「いじめで民事訴訟を起こしても、立証責任は原告である被害者側にある。しかし証拠となる情報を握っているのは学校であり加害者の被告側。この法律のおかげで真相が分かるようになったと被害者が勇気づけられる中身にしてほしい」
そう語るのは、いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)の武田さち子さんだ。同法人のアンケートでは、いじめなど学校で起きた事件事故について、当事者の保護者の約9割が学校や教育委員会の説明に「納得できない」と回答。いじめ自殺で高校1年の長女を失った同法人理事の小森美登里(みどり)さんは「親の知る権利こそ、いじめ対策法の要」と言い切る。
与党案にも学校側の説明責任に関する記述はある。「いじめで児童らの生命、身体、財産に重大な被害が生じた疑いがあるとき」などを「重大事態」と定義。その際には事実関係を調査し、被害児童と保護者に必要な情報を適切に提供すると規定する。一方、民主、生活、社民がまとめた野党案では、すべてのいじめ事案において保護者らへの説明責任を明記した。
武田さんは、与党案について「重大事態だけに限定しており、言葉によるいじめや集団無視といった心に傷を与えるいじめが対象とならない」と指摘。「心の傷で死へと追い詰められる子供はたくさんいる。『重大事態』でなければ保護者に情報開示しなくていいという学校側の逃げ道になる」と危惧する。
与党側からは「いじめすべてが対象となれば、悪口一つでも保護者に報告することになりかねず、現実的でない」と指摘する声も。
実務者協議では、集団無視などを想定し「生命・身体・財産に重大な被害」とするところの「身体」を「心身」に変えるなどの修正案が浮上している。