長野・中学教諭の酒気帯び運転懲戒免:教員懲戒免職処分取り消し訴訟 県、上告を断念 /長野
毎日新聞 2013年6月12日(水)12時38分配信
飲酒翌日の酒気帯び運転を理由に懲戒免職処分を受けた長野市の元中学校教諭、坪井香陽(かよ)さん(43)が県を相手取り、処分取り消しを求めた訴訟で、県は11日、上告断念を決めた。処分取り消しを命じた2審・東京高裁判決が確定する。坪井さんは13日に復職する。
県教委は改めて、坪井さんに停職処分の決定をする方針。県教委の伊藤学司教育長は「処分取り消しは遺憾だが、過失は軽微ではない▽懲戒処分の判断は相当−−など主張も一定程度認められた」とコメントした。
飲酒運転の処分を巡っては、福岡市で2006年に起きた飲酒運転による3児死亡事故を受け、県教委が同年12月に懲戒処分等の指針を改正。酒気帯び運転による物損事故や検挙のみを「停職」から「免職または停職」に変更し、教職員に「原則免職とする」と通知していた。
田中功・教育総務課長は「飲酒運転は重大事故に結びつく違法行為、との考えは変わらない。一方、免職か停職かは、今後は慎重に判断したい」と話した。
坪井さんは09年4月、飲酒翌日に車を運転し交番に財布の紛失を届け出た際、呼気からアルコール分が検知され、道交法違反罪で罰金30万円の略式命令を受けた。同年7月に懲戒免職処分となり、処分を不服として11年4月に長野地裁に提訴した。同地裁は12年11月、「故意は認められず、免職は裁量権の範囲を逸脱する」として処分取り消しを言い渡し、東京高裁も今年5月、県の控訴を棄却した。【小田中大】
◇「悪質とされ切なかった」 坪井さん記者会見
県の上告断念を受け、坪井香陽さんは長野市内で記者会見し、「まだ信じられない。これまでのつらかった気持ちが吹き飛んだ」と喜びの表情を見せた。
坪井さんは懲戒免職になった09年7月以降、教え子から学校に戻ってほしいと言われたという。「生徒に寄り添える教師になりたい」と決意を語った。
一方、懲戒免職処分とした県教委の当時の判断については「自分の過失は否めないが、悪質と判断されたことが切なかった。もう少し人間的に考えてほしかった」と述べた。
原告団長の大門嗣二(おおかどつぐじ)弁護士は「処分と(坪井さんの)行為のバランスが取れていなかった。(処分当時は)飲酒運転に対する世間の非難が厳しい時期だったので、過度な反応をしてしまったのではないか」と批判した。【巽賢司】
6月12日朝刊