<類塾>講師を「名ばかり取締役」 残業代未払い提訴も
毎日新聞 2017/7/2(日) 7:30配信
大阪、奈良両府県で進学塾65校を運営する「類(るい)設計室」(大阪市淀川区)が講師らスタッフの大半を「取締役」に就任させ、残業代を払わなかったとして訴訟が相次いでいる。登記簿上の取締役は6月現在で約400人。複数の訴訟で代理人を務める渡辺輝人弁護士(京都弁護士会)は「取締役とは名ばかりで、実態は従業員。会社は労働法規を守るべきだ」と訴えている。
◇京都地裁「労働者」認定 1200万円命令
同社は1972年創業で、主に小中学生を対象に進学塾「類塾」を運営。大阪府内の進学校、府立北野高校(淀川区)などに多くの合格者を出すことで知られる。ホームページによると、2013年の生徒数は約2万人。
同社によると、講師などを担当するスタッフの大半は株主と取締役を兼ね、全員が経営に参加しているとの位置づけだ。報酬は定額制で、残業代や休日手当はなかった。しかし、この数年で退職者から残業代の請求が急増。09年以降の8年間で約80人が請求し、大半は一部を支払って解決したが、複数の元講師らが大阪、京都の両地裁に提訴し、少なくとも6件が係争中だ。
同社はこの件を含む複数の訴訟で、講師らとは労働契約を結んでおらず、労働基準法上の労働者ではないと反論。講師らは取締役への就任を承諾したと主張している。
しかし、元スタッフが起こした訴訟で、京都地裁は15年、出退勤の時間を管理されていることなどから、「会社の指揮監督に従う労働者」と認定。同社にほぼ請求通り約1200万円の支払いを命じた。判決は昨年7月に最高裁で確定し、他の訴訟でも残業代などの支払いを命じる判決が相次いだ。
同社は昨年5月、固定残業代を支払うよう報酬規定を変更したという。取材に「裁判所の判断には納得できないが、法に反しないよう対応したい」と話している。【原田啓之】